常平通宝

常平通宝（じょうへいつうほう）とは

常平通宝は、李氏朝鮮時代に鋳造・流通した銅銭です。朝鮮半島における貨幣の歴史は古く、高麗時代に鉄銭が発行されたのが始まりです。その後、中国の貨幣を模倣した銅銭も発行されましたが、流通は限定的でした。

李氏朝鮮時代に入り、何度か独自の銅銭を鋳造する試みがありましたが、思うように普及せず、中国銭や物品貨幣が依然として使用されていました。しかし、17世紀後半に常平通宝が発行されてから、朝鮮半島における貨幣経済が本格的に発展します。

常平通宝の普及

1678年、粛宗の時代に常平通宝が恒常的に発行されるようになり、唯一の法定通貨として朝鮮全土に普及しました。この銭貨は正円方孔で、表面には「常平通宝」の4文字が刻まれ、裏面には鋳造した官庁を示す文字が記されています。この常平通宝の普及により、朝鮮半島では商品貨幣経済が発達し、人々の生活に欠かせないものとなりました。

常平通宝の種類

常平通宝には、いくつかの種類があります。

古常平: 1633年に鋳造が開始された初期の常平通宝で、裏面に文字がないものと、1678年以降に発行された裏面に発行所を示す文字があるものがあります。現存数は非常に少ないです。

折二銭: 1679年から発行された、1枚で2文に相当する銭貨です。大量に発行され、常平通宝の流通を大きく促進しました。裏面には発行所を表す文字や漢数字、千字文の文字などが組み合わされています。

新常平小平銭: 1778年から発行された1枚1文の銭貨です。こちらも大量に鋳造され、広く流通しました。裏面には様々な種類があり、発行所、漢数字、千字文の文字、記号などが組み合わされています。種類は非常に多く、1万種類以上存在するとも言われています。

当百銭: 1866年、興宣大院君によって発行された100文に相当する銭貨です。財政難を打開するために鋳造されましたが、実際には額面通りの価値を持たず、インフレーションを引き起こし、わずか2年で通用停止となりました。

当五銭: 1883年に発行された5文に相当する銭貨です。開港後の財政難を補填する目的で鋳造されましたが、当百銭と同様に物価上昇を招き、1895年に通用停止となりました。

常平通宝の終焉

1894年に常平通宝の鋳造・発行事業が終了しました。1905年以降、朝鮮統監府が設置されると、「朝鮮貨幣整理事業」により常平通宝は回収され、大日本帝国発行の貨幣に置き換えられました。その際、常平通宝10文が1銭と交換されました。

常平通宝は、朝鮮の貨幣史において重要な役割を果たしました。その歴史は、朝鮮の経済や社会の変化を反映しており、多くの人々に利用された銭貨です。

参考資料

大田由紀夫「銭躍る東シナ海」2021年、講談社
六反田豊「一冊でわかる韓国史」2021年、河出書房新社

外部リンク

『常平通宝』 - コトバンク

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