常設統合司令部

イギリス軍常設統合司令部 (PJHQ): 統合作戦の司令塔

イギリス軍の常設統合司令部（Permanent Joint Headquarters, PJHQ）は、陸軍、海軍、空軍の3軍を統合した司令部組織です。イギリス軍のあらゆる統合軍事作戦の指揮、海外軍事活動の計画と統制という、極めて重要な役割を担っています。単一軍種による作戦は、それぞれの軍種司令部が適切に指揮します。

PJHQの役割と責任

PJHQの主要な任務は、イギリス軍の統合作戦の指揮です。これは、単なる軍事的作戦にとどまらず、外交目標達成のための軍事動員、多国籍作戦への参加、そして北大西洋条約第5条に基づく集団的自衛権発動における作戦指揮までを含む広範な領域に及びます。

具体的には、以下の作戦・地域を統括しています。

多国籍作戦への参加: 国際協調による軍事作戦におけるイギリス軍の指揮を担います。
集団的自衛権発動: NATO加盟国への攻撃に対する対応におけるイギリス軍の作戦指揮を行います。
* 海外基地の管轄: ジブラルタル、キプロスのイギリス主権基地、フォークランド諸島、ディエゴガルシア島などの海外基地におけるイギリス軍の活動を指揮します。

ただし、イギリス本土の基地防衛、北方諸島防衛、国内テロ対策などは、PJHQの管轄外となります。

PJHQの組織と運営

PJHQは、統合作戦部長（Chief of Joint Operations, CJO）を司令官として、幕僚長と統合部隊作戦準備及び訓練部長（CJFORT）の2人の少将を補佐役としています。CJFORTは、緊急対処部隊（JRRF）や統合部隊司令部（JFHQ）の準備、軍種横断的な訓練、即応体制の維持などを担当します。

組織構造は、NATO諸国との連携を円滑に進めるため、NATOの幕僚組織を参考に構築されています。

PJHQ設立の経緯

冷戦時代、イギリス軍は、必要に応じてその都度、各軍種から司令官を選出し、協同作戦を実施していました。しかし、1982年のフォークランド紛争では、この体制の限界が露呈しました。前線指揮官は、膨大な兵力を指揮する負担に加え、本国政府との綿密な情報伝達と調整に追われ、意思決定の遅延を招きました。また、協同作戦における誤射事件も発生し、恒常的な統合作戦体制の必要性が浮き彫りになりました。

冷戦終結後、財政削減と効率性向上が求められる中、政策と運用を分離し、明確な責任範囲を定める必要性が認識されました。その結果、計画から作戦遂行、戦訓の蓄積までを一貫して担うPJHQの設立に至ったのです。情報通信技術の進歩も、この統合化を促進する大きな要因となりました。

歴代司令官

PJHQの司令官である統合作戦部長には、3つ星の将官が任命されます。

まとめ

PJHQは、現代の複雑化する国際情勢において、イギリス軍の統合作戦を円滑に遂行するための重要な組織です。フォークランド紛争の教訓を踏まえ、冷戦終結後の新たな安全保障環境に対応するため、設立されました。その役割は、単なる軍事作戦の指揮にとどまらず、外交目標達成のための軍事動員や多国籍作戦への参加、そして集団的自衛権発動における作戦指揮までを含み、イギリス軍の作戦能力の中核を担っています。

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