常陸那珂火力発電所とは？意味をやさしく解説

常陸那珂火力発電所

常陸那珂火力発電所は、茨城県那珂郡東海村に位置するJERAの石炭火力発電所です。構内には、株式会社常陸那珂ジェネレーション（JERAの子会社）が運営する常陸那珂共同火力発電所も立地しており、両発電所について本稿で解説します。

概要

石油に代わる安定的なエネルギー源として、石炭を燃料とする火力発電所が建設されました。1号機は2003年12月に、2号機は2013年12月18日に運転を開始しました。当初、1号機は東京電力、2号機は電源開発が開発主体でしたが、2号機の事業主体は後に東京電力に変更されました。これは、電力需要の低迷により投資回収の見通しが不透明になったため、民営化を控えていた電源開発が財務リスクを避けたためです。

3号機以降の増設計画では、東京電力が実施した入札募集に対し、中部電力と東京電力が共同で応札し、落札しました。これにより、発電所の建設・運転・保守を担う共同出資会社として、2013年12月に株式会社常陸那珂ジェネレーションが設立され、当発電所構内に常陸那珂共同火力発電所1号機を建設、2017年に着工、2021年1月8日に営業運転を開始しました。

1号機と2号機は、2016年4月以降、東京電力ホールディングスの子会社である東京電力フュエル&パワーが所有・運用していましたが、2019年4月にJERAに移管されました。2021年時点では、常陸那珂ジェネレーションはJERAの100%子会社となっています。

発電設備

総出力：200万kW（2016年4月1日現在）
敷地面積：約120万m2
発電方式：汽力発電方式

1号機

定格出力：100万kW
使用燃料：石炭
蒸気条件：超々臨界圧（Ultra Super Critical）
熱効率：45.2%（低位発熱量基準）
営業運転開始：2003年12月12日

2号機

定格出力：100万kW
使用燃料：石炭
蒸気条件：超々臨界圧（USC）
熱効率：45.2%（低位発熱量基準）
営業運転開始：2013年12月18日

常陸那珂共同火力発電所1号機

定格出力：65万kW
使用燃料：石炭
蒸気条件：超々臨界圧（USC）
営業運転開始：2021年1月8日

廃止された発電設備

緊急設置電源

2011年3月11日の東日本大震災により、複数の発電施設が被災し、電力供給力が大幅に低下したため、緊急設置電源が設置されました。電力需給が逼迫した際に稼働していましたが、被災した火力発電所の復旧などにより、2012年3月31日に全て廃止されました。

総出力：25万3,230kW（全設備完成当時）

1号ガスタービン（緊急設置電源）（廃止）

発電方式：ガスタービン発電方式
定格出力：2万5,700kW（リース）
使用燃料：軽油
熱効率：34.0%（低位発熱量基準）
営業運転期間：2011年7月19日 - 2012年3月31日

2号ガスタービン（緊急設置電源）（廃止）

発電方式：ガスタービン発電方式
定格出力：2万5,700kW（リース）
使用燃料：軽油
熱効率：34.0%（低位発熱量基準）
営業運転期間：2011年7月19日 - 2012年3月31日

1号ディーゼル～183号ディーゼル（緊急設置電源）（廃止）

発電方式：ディーゼル発電方式（内燃力発電）
定格出力
1,500kW × 64台（リース）※1～64号
1,030kW × 26台（リース）※65～90号
850kW × 93台（リース）※91～183号
使用燃料：軽油
熱効率
33.8%（低位発熱量基準）※1～64号
35.8%（低位発熱量基準）※65～90号
35.1%（低位発熱量基準）※91～183号
営業運転期間
1～64号：2011年7月29日 - 2012年3月31日
65～183号：2011年7月28日 - 2012年3月31日

東北地方太平洋沖地震による被害

2011年3月11日に発生した東日本大震災により被災しました。当時、煙突で作業中だった作業員の足場が崩れ、4名が死亡する事故が発生しました。また、当時運転中だった1号機が停止しました。同年5月15日に1号機は運転を再開しましたが、当初は石炭をボイラーに供給する設備が復旧しておらず、出力は4割程度でした。

発電所としての特徴

1号機は、東京電力所有の石炭専焼火力としては30年ぶりとなるもので、国内最大規模の100万kWを誇ります。また、主蒸気温度および再熱蒸気温度600℃、主蒸気圧力24.5MPaとした超々臨界圧のボイラーおよび蒸気タービンを採用し、石炭火力としては最高水準となる熱効率43%（高位発熱量基準）を実現しました。

環境対策にも力を入れており、集塵装置をはじめとする硫黄酸化物、窒素酸化物、ばい煙の防止対策、貯炭場への散水や遮風フェンスの設置による粉塵飛散防止対策を行っています。また、敷地内にはビオトープ緑地や運動施設、釣り場などが設けられ、予約をすれば誰でも利用可能です（東日本大震災の影響により、現在は閉鎖されています）。

アクセス

タクシー
勝田駅東口より約20分
東海駅東口より約20分

脚注

注釈・出典

常陸那珂火力発電所