幌内炭鉱

幌内炭鉱：日本の近代化を支えた石炭の記憶

幌内炭鉱は、北海道三笠市（開山当時は幌内村）に存在した炭鉱であり、石狩炭田の一角を担っていました。明治時代から戦後の復興期にかけて、日本の近代化をエネルギー面から支えた重要な炭鉱の一つとして、その名を歴史に刻んでいます。

開発と構造

開発には独立系の炭鉱会社も参加しましたが、中心的な役割を果たしたのは北海道炭礦汽船（北炭）でした。北炭が開発した本鉱の立坑は、海面下1,000mを超える日本最大規模を誇りました。

炭鉱内部は、0片から7片までの坑道で構成されていました。中でも3片、4片、5片は広大な鉱区を有し、主要な採掘エリアでした。最深部の7片で採掘された石炭は、複数の斜坑とベルトコンベアを介して常磐坑口の選炭場まで運ばれました。人員や機材の運搬には、1966年に建設された幌内立坑櫓が利用されました。この立坑櫓は、坑道への送気ルートとしても機能していました。

歴史

1878年、アメリカ人技師ベンジャミン・スミス・ライマンの指導のもと、本格的な開発が始まりました。最新の機械化技術が導入され、幌内炭鉱は日本の近代炭鉱の先駆けとなりました。

1879年：官営炭鉱として開山。「大坑道」（後の音羽坑）が開削。
1882年：官営幌内鉄道が開通。石炭輸送を担う。
1889年：北炭が炭鉱と鉄道の払い下げを受け、民営化。
1975年：大規模なガス突出事故が発生。13名の犠牲者を出す。
* 1989年：閉山。

1975年のガス突出事故

1975年11月27日、幌内炭鉱の深部でガス突出事故が発生し、その後のガス爆発によって13名もの犠牲者を出す大惨事となりました。救助活動は困難を極め、鎮火のために坑道への注水が行われましたが、消火活動は難航しました。事故後、主力坑道は失われましたが、復旧作業を経て操業は再開されました。

閉山後の遺構と現在

閉山後、多くの施設が解体されましたが、一部の遺構は三笠ジオパークの一部として整備され、その歴史を今に伝えています。また、文化庁の日本遺産「本邦国策を北海道に観よ！ ～北の産業革命「炭鉄港」～」にも指定されています。

現存する遺構としては、変電所や基礎、幌内神社、炭鉱住宅群などが挙げられます。2004年夏には排気立坑櫓が解体されましたが、立坑櫓後方にはズリ山が残っています。炭鉱跡地は現在、工業団地となっています。

「みかさ炭鉱の記憶再生塾」による炭鉱施設跡の整備が進められており、「幌内炭鉱自然公園」として公開されています。公園内には、音羽坑、常磐坑、坑内神社、幌内神社、選炭場などの遺構が保存されています。

最盛期には多くの商店が立ち並んだ幌内商店街も、閉山とともに衰退し、現在ではわずかな店舗を残すのみとなっています。また、炭鉱跡地は、建設残土や産業廃棄物の処分場として利用された時期もありました。

2016年現在、幌内地区の人口は約500人となっています。かつて集落のあった地域は、廃道となり、自然に還りつつあります。しかし、幌内炭鉱は、日本の近代化を支えた重要な産業遺産として、その記憶は語り継がれています。

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