幕末の三舟

幕末の三舟とは

幕末の三舟とは、幕末から明治初期にかけて活躍した勝海舟、山岡鉄舟、高橋泥舟の三人を指す言葉です。この三人は、いずれも「舟」の字が名前についていることから、この名で呼ばれるようになりました。特に、江戸無血開城という歴史的な出来事に深く関わっており、その功績は非常に大きいと言えるでしょう。

三舟それぞれの役割

勝海舟 は、幕府の海軍の中核を担い、開国派の中心人物でした。西郷隆盛との会談を実現させ、江戸城無血開城への道筋を作った功労者として知られています。冷静かつ合理的な判断力で、時代の転換期を乗り切った人物として、今もなお多くの人に知られています。

山岡鉄舟 は、剣術家であり、徳川慶喜の使者として駿府へ赴き、西郷隆盛と直接交渉した人物です。慶喜の命を受け、勝海舟の協力を得ながら、西郷との会談を実現させ、江戸城開城の基本条件を取りまとめました。彼の誠実な態度が西郷を動かし、江戸無血開城へと繋がったと言われています。

高橋泥舟 は、徳川慶喜の護衛役を務めていました。慶喜の恭順の意を伝えるために、自らが動けない代わりに、山岡鉄舟を推薦した人物です。彼は、遊撃隊の隊長として、慶喜の身辺警護に尽力し、その忠誠心は非常に厚かったとされています。

江戸無血開城への道

慶応4年（1868年）、江戸城進撃が迫る中、徳川慶喜は恭順の意を示し、高橋泥舟にその意思を伝えたいと述べました。しかし、高橋は江戸を離れることができず、代わりに義弟の山岡鉄舟を推薦します。山岡は、勝海舟の協力を得て、駿府で西郷隆盛と会談し、江戸城無血開城の基本条件を取りまとめました。この時、山岡は西郷と初めて会いますが、彼の真摯な態度に西郷が感銘を受け、交渉に応じたと伝えられています。その後、勝海舟も西郷と会談し、江戸城は無血開城へと至りました。

三舟の功績

江戸無血開城は、多くの犠牲を出すことなく、平和的に政権を移行させることに成功した歴史的な出来事です。この背景には、勝海舟の冷静な判断力、山岡鉄舟の誠実な交渉力、そして高橋泥舟の忠義心がありました。彼らの存在なくして、江戸の無血開城は実現しなかったと言えるでしょう。

幕末の四舟

また、この三人に、木村芥舟、もしくは田辺蓮舟を加えて「幕末の四舟」と呼ぶこともあります。彼らもまた、幕末という激動の時代の中で、それぞれの役割を果たした人物として知られています。

関連文献

頭山満 『幕末三舟伝』島津書房
松本健一 『幕末の三舟 - 海舟・鉄舟・泥舟の生きかた』 講談社選書メチエ
子母沢寛『逃げ水』
大森曹玄『山岡鉄舟』
水野靖夫『勝海舟の罠―氷川清話の呪縛、西郷会談の真実』（毎日ワンズ、2018年）
岩下哲典『江戸無血開城―本当の功労者は誰か? 』（吉川弘文館「歴史文化ライブラリー」、2018年）
水野靖夫『定説の検証「江戸無血開城」の真実 西郷隆盛と幕末の三舟 山岡鉄舟・勝海舟・高橋泥舟』（ブイツーソリューション 2021年）

関連項目

江戸開城

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