平和観世音 (竹内久一)

平和観世音

『平和観世音』（へいわかんぜおん）は、竹内久一によって制作された青銅像で、日露戦争で亡くなった戦士たちを追悼するために作られました。以前は『戦勝観世音』（せんしょうかんぜおん）という名称で呼ばれていました。

概要

この像は、竹内久一が原型を創り、鈴木鉄工所により鋳造されたものです。日露戦争において、旧遠江国から出征した1059柱の戦没者の冥福を祈るために設立されました。明治時代の古典的な造形美が感じられるこの作品は、竹内の代表作となっています。

沿革

日露戦争が終わると、遠江国を代表する報徳社の社長岡田良一郎が、戦没者を無くすために観世音菩薩像の建立を提案しました。この提案には掛川報徳婦人積善会も賛成し、地域の住民から寄付が集まりました。その後、岡田氏と掛川報徳婦人会が中心となり、竹内がデザインを手がけ、鈴木鉄工所で鋳造作業が行われました。像の主な材料は青銅ですが、全国から寄贈された古鏡や金属も使われました。1907年、掛川城の天守台跡に『戦勝観世音』として建立され、地元の住民によって管理され続けました。

また、寺院ではないにも関わらず、遠江三十三観音霊場の一部にも選ばれ、地域の人々の信仰を集める存在になりました。戦後の1945年には、太平洋戦争に伴う金属供出令に対して、掛川町の町長鈴木理一郎が戦没者遺族の感情を考慮し強く反対。結果として、この像は供出を免れました。戦後、名称は『平和観世音』に変更され、1957年には建立50周年を祝う法要が行われました。

その後、掛川城の再建計画により、1989年に富士見台霊園へと移設されました。

影響

この像は、静岡県小笠郡掛川町の象徴として広く親しまれてきました。特に、掛川城天守台跡に建立されていたため、地域のアイコン的存在となっています。静岡県立掛川西高等学校では、学校新聞の題字に平和観世音のイラストが使われるなど、地域のシンボルとして親近感を抱かれています。また、学校の男女共学化を祝う際には、スカートを穿いた平和観世音のイラストも登場し、地域文化の一部として定着しています。

関連人物・施設

この像の建立には多くの人々が関わっており、岡田良一郎や河井彌八、鈴木理一郎、高階瓏仙といった著名な人物も存在します。また、仏教美術や戦争記念施設としても重要な役割を持っています。

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