平尾入定塚

平尾入定塚の歴史と意義

平尾入定塚（ひらおにゅうじょうづか）は、東京都稲城市平尾二丁目に存在する歴史的な塚です。この塚は室町時代末期、16世紀前半に築かれました。発掘調査により、1536年8月31日（天文5年8月15日）に修行僧の長信がここに埋葬され、「入定」を遂げたことが確認されています。

塚の概要

平尾は多摩丘陵の自然豊かな地域にあり、現在は平尾団地が開発されています。しかし、入定塚は団地内の造成が行われていない場所に位置し、フェンス越しに見学できるようになっています。出入り口の近くには、入定塚の歴史を紹介する石碑があり、そこには稲城かるたの「入定の長信坊は塚残し」という言葉と、長信坊を描いた絵札が刻まれています。また、入定塚の近くには全国的に貴重な「平尾十三塚」があり、その全てが現存しています。さらに、少し離れた平尾一丁目には、江戸時代中期の1708年に築かれた「平尾原経塚」も存在しています。

発掘調査の成果

入定塚は1959年に発掘され、その調査によって多くの貴重な成果が得られました。塚は約10.8メートル×10.8メートルの正方形の形状をしており、内部には礎石を伴う4本の柱と、板材を用いた1.8メートル×2.1メートルの地下空間の痕跡が見つかりました。この空間には板材を取り付けるための鉄釘や、鉄製の刀子、銅銭、板碑などが発掘され、特に板碑の一枚には「天文五年丙申八月十五日、長信法印入定上人」と彫られていました。このことから、長信が入定を果たすために生きたまま中に入り、そのまま埋葬されたと考えられています。

入定の背景と文化的意義

中世から江戸時代にかけて、真言密教系の僧侶の中には、弥勒菩薩が来迎するのを待ちながら、衆生の救済を願い、経を唱えながら土中に埋まる入定に至るという厳しい修行をする者がいました。平尾入定塚は、そのような実例の一つであり、築造された年月がわかる貴重な遺跡です。このため、発掘時の資料は稲城市の文化財として貴重視されています。

まとめ

平尾入定塚は、江戸時代の修行僧長信の入定の場として重要な歴史を持ち、その遺跡は地域の貴重な文化遺産となっています。入定塚を訪れることで、当時の人々の信仰や修行の姿を感じ取ることができるでしょう。平尾の自然環境とともに、入定塚は歴史と文化を語り継ぐ大切な場所と言えます。

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