平尾賛平商店

平尾賛平商店について

平尾賛平商店（ひらおさんぺいしょうてん）は、1878年に東京で設立された化粧品メーカーであり、主に「レート（LAIT）」ブランドで知られていた。この名称はフランス語で「乳」を意味し、フランス語の響きを持つ日本初の化粧品ブランドとして人々に愛されました。残念ながら1954年に廃業となり、その歴史は幕を閉じました。

創業と初代賛平の活動

初代の平尾賛平は静岡県出身で、東京市日本橋区の馬喰町に店舗を開設しました。1878年には初めての化粧水「小町水」を市場に投入し、これを機に本格的に商業活動を展開しました。翌年には屋号を「岳陽堂」に改名し、1891年には二代目である平尾聚泉（平尾賛平の孫）が命名するかたちで「ダイヤモンド歯磨」を世に送り出しました。

この時期、初代酢には東京美術学校の高村光雲や彫刻家の後藤貞行など、多くの文化人との関係があったとされます。特に高村光雲とは親しい関係で、財政的な支援を行い、互いに影響を与え合いました。これが平尾賛平商店の文化的な背景にも寄与しているのです。

二代目賛平と広告戦略

初代の死後、1898年に二代目の平尾聚泉が社長に就任しました。彼は新たな広告手法を取り入れ、商品の認知度を上げることに成功しました。この戦略が功を奏し、1908年には大阪に成功裏に支店を開設し、大陸にも進出しました。同年には「ダイヤモンド歯磨」を「金剛石牙粉」と名称を変え、中国市場にも広告を出すようになります。

平尾家は特に広告に工夫を凝らし、1918年にはクリームと白粉をセットにした「レートメリー」を革新的な商品として発表しました。この商品は大評判を呼び、競争相手の中山太陽堂と並び称される人気を誇りました。「東のレート、西のクラブ」と謳われるほど、その業界での地位を確立しました。

文献活動と文化貢献

二代目はまた古銭収集にも情熱を燃やし、新聞広告を通じて収集を行っていました。彼は著書も多く残しており、1929年には『平尾賛平商店五十年史』を出版し、1932年には『昭和泉譜』、さらに1937年には『初代平尾賛平小伝』を出版しました。これらの作品は平尾賛平商店の歴史や文化的背景を後世に伝える重要な資料となっています。

商法の変更と廃業

1949年、企業名を「レート」に変更した平尾賛平商店。しかし1954年、会社更生法の申請が認められず、創業76年の歴史に幕を下ろす形となりました。この閉鎖は当時の経済状況を反映しており、長年の成功を収めていた企業が、突然の変化に適応できなかった一例といえます。

影響と最末期

平尾賛平商店で培った経験や伝統は、二代目平尾賛平の子孫たちに引き継がれています。音楽家として知られる平尾貴四男や、作曲家で歌手として活躍した平尾昌晃（出生名・勇）も、平尾賛平商店の血筋を受け継いでいます。彼らは慶應義塾の教育を受け、さまざまな文化的な活動へ貢献しています。

平尾賛平商店は、その成功と影響を通じて日本の化粧品業界に多大な貢献を果たし、今日に生きる多くの企業や文化にも影響を与え続けているのです。

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