平尾貴四男

平尾貴四男（ひらお きしお）

平尾貴四男は、1907年7月8日に東京府東京市日本橋区（現在の東京都中央区）で生まれた日本の作曲家です。化粧品業を営む裕福な家庭の四男として育ちました。慶應義塾幼稚舎から慶應義塾大学医学部に進学しましたが、後に文学部独文科に転じ、1930年に卒業しました。

学生時代と音楽への道

大学在学中から音楽に深い関心を持ち、ピアノをチャーレス・ラウトロプらに、ソルフェージュと音楽理論をヴァンサン・ダンディの弟子である大沼哲に、和声学を弘田龍太郎に師事しました。卒業後間もない1930年11月には、戸沢妙子と結婚しています。

パリ留学と作曲活動

1931年、夫婦でパリに渡り、スコラ・カントルムでギ・ド・リオンクールに作曲を師事し、和声学課程を修了。その後、リオンクールが創設したセザール・フランク音楽学校に転学し、対位法課程とフーガ課程を修了しました。また、課外ではフルートをガストン・クリューネルに学びました。1936年に帰国し、1948年には安部幸明らと作曲グループ「地人会」を結成し、精力的に作品を発表しました。

作風と主要作品

平尾の作品は、室内楽を中心に、管弦楽、声楽など多岐にわたります。代表作には、ソプラノとバリトン独唱と管弦楽のための「隅田川」、管弦楽曲「砧」、ヴァイオリン・ソナタ、ピアノソナタなどがあります。フランス留学で培われた音楽理論と、日本の伝統音楽の要素を融合させた独自の作風が特徴です。彼の作品は、繊細な旋律と豊かな和声が魅力で、特に室内楽作品は、その洗練された美しさで高く評価されています。

戦後と晩年

戦後は、国立音楽大学の教授として後進の指導にあたる傍ら、日本現代音楽協会の委員長を務めるなど、日本の音楽界の発展に貢献しました。しかし、病に倒れ、1951年の「オーボエ・ソナタ」が最後の作品となり、1953年12月15日に46歳で生涯を閉じました。翌年、木管五重奏曲に対して毎日音楽賞が追贈されました。

家族と弟子

妻の平尾妙子と四女の平尾はるなは共にピアニストで、孫の辻功はオーボエ奏者です。作曲家・歌手の平尾昌晃は甥にあたります。弟子には、冨田勲、宇野誠一郎、一柳慧などがいます。

主要作品

管弦楽

交響的断章
古代讃歌（初演時の曲名は「古代旋法による緩徐調」）
俚謡による変奏曲（機織唄による変奏曲）
交響詩曲「砧」
序曲「翼」
序曲「桃太郎」
平和への序曲

吹奏楽曲

諧謔曲「南風」

室内楽・器楽

弦楽四重奏曲（譜面は戦災で焼失の可能性あり）
ロマンス（フルート、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、ハープ）
フルート組曲（フルートソロ、ホルン、ティンパニ、チェレスタ、ヴァイオリン4、ヴィオラ、チェロ、コントラバス）
フルート・ソナチネ（フルート小奏鳴曲）
馬子唄（フルート、クラリネット、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、ピアノ）
荒城の月に據る変奏曲（オークラウロ〔もしくはフルート〕、独唱、ピアノ）
夜曲（ヴァイオリン、チェロ、ピアノ）
ピアノ五重奏曲「春麗」
ヴァイオリンとピアノのための子守唄
天長節を祝ぎまつりて（木管五重奏）
ヴァイオリン・ソナタ
フルートとヴァイオリンとピアノのための三重奏曲
ピアノ・ソナタ
ピアノ・ソナチネ「みのり」
奇想組曲（フルート、オーボエ、クラリネット、2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、ピアノ）
木管五重奏曲
オーボエ・ソナタ

声楽

隅田川（ソプラノ、バリトン、管弦楽〔もしくはピアノ〕）
こすもす（ソプラノと管弦楽〔もしくはピアノ〕）
日本民謡組曲（ソプラノ〔もしくはテノール〕と管弦楽〔もしくはピアノ〕）
和奈佐乙女物語（ソプラノ、テノール、合唱、管弦楽〔もしくはピアノ〕）
白い花
栗問答
麦笛
逃げた小鳥
海に寄する歌
山のあなた
うぐいす
菜の花畑
農民歌
父なる我は
草刈唄
山の朝
松の木の間の路
風さん
まめさん
こなゆきこんこ

著書

『これからの音楽鑑賞教育』(1947年)
『私たちの作曲：みんなでやろう』(1949年)

訳書

テオドール・デュボワ『和声学 理論篇』『和声学 解答篇』(1942年)
* オリヴィエ・メシアン『わが音楽語法』(1954年)

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