平成筑豊鉄道伊田線

伊田線：筑豊の歴史を繋ぐ鉄路

伊田線は、福岡県直方市の直方駅から同県田川市の田川伊田駅を結ぶ、平成筑豊鉄道の基幹路線の一つです。全長16.1kmのこの路線は、筑豊本線と同様に、かつて筑豊炭田で産出された石炭を若松や戸畑といった積出港へ運ぶために敷設されました。この歴史的背景から、伊田線は筑豊地域の発展に深く関わってきた鉄道路線と言えるでしょう。

路線概要

管轄: 平成筑豊鉄道（第一種鉄道事業者）
区間: 直方駅 - 田川伊田駅 (16.1km)
軌間: 1,067mm
駅数: 15駅（起終点駅含む）
複線区間: 全線
電化区間: 全線非電化
閉塞方式: 複線自動閉塞式
最高速度: 95km/h
IC乗車カード: 非対応

伊田線の特徴として、全線が複線化されている点が挙げられます。これは、特定地方交通線の中では唯一の事例です。また、全線が非電化であるため、運行される列車は気動車となっています。

運行形態

昼間時間帯には、1時間に2本の列車が運行されています。そのうち1本は田川線に直通し、直方駅と行橋駅の間を結びます。もう1本は糸田線に直通し、直方駅と田川後藤寺駅の間を結んでいます。かつては朝にも糸田線直通列車が運行されていましたが、2021年3月のダイヤ改正で、平日・土休日ともに同じダイヤ編成となり、朝の直通列車はなくなりました。早朝や夜間には、金田駅を始発・終着とする列車が運行されることもあります。

糸田線、田川線と同様に、伊田線でもワンマン運転が実施されています。

歴史

伊田線の歴史は、筑豊炭田の隆盛とともに始まりました。1893年、筑豊興業鉄道によって直方駅 - 金田駅間が開業したのが最初の開業区間です。その後、1897年に九州鉄道に合併され、1899年には豊州鉄道（現在の田川線）の伊田駅（現在の田川伊田駅）まで延伸し、全線が開通しました。1911年には、全線が複線化されました。これは、当時の石炭輸送需要の大きさを物語っています。

伊田線は、本線の他に沿線の炭鉱へ伸びる貨物支線を多数有していましたが、筑豊炭田の衰退とともにそれらも廃止されていきました。そして、伊田線自身も第3次特定地方交通線に選定され、1989年にJR九州から平成筑豊鉄道に転換されました。

平成筑豊鉄道への転換後も、金田駅から延びる三井鉱山の専用鉄道からのセメント輸送のため、JR貨物の貨物列車が直方駅 - 金田駅間に乗り入れていましたが、2004年3月末に三井鉱山がセメント事業から撤退したため、貨物営業は廃止されました。

年表

1893年: 筑豊興業鉄道により直方 - 金田間が開業
1899年: 金田 - 伊田間が延伸開業、全線開通
1911年: 全線複線化
1989年: JR九州から平成筑豊鉄道へ転換
2004年: 貨物営業廃止

駅一覧

直方駅 (01)
南直方御殿口駅 (02)
藤棚駅 (03)
市場駅 (04)
人見駅 (05)
あかぢ駅 (06)
上金田駅 (07)
金田駅 (08)
糒駅 (09)
ふれあい生力駅 (10)
赤池駅 (11)
中泉駅 (12)
下伊田駅 (13)
田川市立病院駅 (14)
田川伊田駅 (15)

廃止区間

過去には、以下のような貨物支線が存在しましたが、廃止されています。

中泉駅 - 藤棚駅 - 日焼駅
中泉駅 - 大城第一駅
中泉駅 - 大城第二駅
赤池駅 - 赤池炭坑駅
金田駅 - 堀川駅
* 金田駅 - 方城駅

まとめ

伊田線は、筑豊炭田の歴史を物語る重要な路線であり、地域住民の足として、現在も重要な役割を担っています。過去には石炭輸送の大動脈としての役割を果たしましたが、時代の変化とともに、その役割は地域輸送へと移り変わってきました。この路線は、筑豊の歴史と文化を今に伝える、貴重な存在と言えるでしょう。

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