平成16年台風第18号

2004年台風第18号（ソングダー）：日本列島を襲った猛威

2004年8月、マーシャル諸島近海で発生した台風18号（アジア名：ソングダー）は、当初の予想を覆し、日本列島に大きな爪痕を残しました。この台風は、その勢力、進路、そして被害の広範囲さから、日本における近年まれに見る規模の災害となりました。後に激甚災害に指定されるほどの甚大な被害をもたらしたのです。

予想外の進路と驚異的な勢力

当初、中国大陸へ向かうと予想されていた台風18号は、太平洋高気圧の勢力減衰という思わぬ変化により、日本の南海上を北西へと進路を変えました。9月5日には、沖縄本島北部を大型で非常に強い勢力で通過。沖縄県名護市では、最低海面気圧924.4hPaという記録的な低気圧を記録しました。

その後、勢力をさらに増した台風18号は、9月6日には1991年の台風19号に匹敵する勢力となり、九州地方北部への上陸が濃厚となりました。マスコミもこの異常な進路と勢力に注目し、大々的に報道しました。

九州地方北部への上陸後、台風18号は東シナ海を北上、そして北東へと進路を変え、9月7日午前9時半頃、強い勢力で長崎県長崎市付近に上陸。九州地方北部を横断した後、山陰沖に達し、速度を増しながら日本海を北東へと進みました。暴風域を伴ったまま北海道西海上を北上し、9月8日午前9時には温帯低気圧へと変わりましたが、その後も勢力を維持し、暴風域を拡大しながら宗谷海峡へと達したのです。

類例のない進路と「風台風」の特性

この台風の進路は、1992年の台風19号と酷似しており、北海道に再発達して接近した点、そして大きな被害をもたらした点は、1954年の洞爺丸台風にも類似性が指摘されています。さらに、この台風が「風台風」であったという点も、洞爺丸台風など過去の大型台風との共通点として挙げられます。「風台風」とは、中心気圧の低下以上に、強風による被害が顕著な台風のことを指します。

記録的な風速と豪雨、高潮

台風18号は各地で観測史上最大級の風速を記録しました。広島県広島市では最大瞬間風速60.2m/s、北海道札幌市では50.2m/sを記録。沖縄、九州、中国地方、北海道など、広範囲で最大瞬間風速50m/sを超える猛烈な風が吹き荒れました。九州地方の一部では、900mmを超える大雨を記録。瀬戸内海沿岸、西日本から北日本の日本海側沿岸では、高潮が発生し、沿岸部を襲いました。

甚大な被害と各地の記録

この台風により、各地で建物の損壊、倒木、飛散物による負傷者多数といった被害が発生しました。西日本では船舶の座礁事故が相次ぎました。死者41名、行方不明者4名という人的被害に加え、保険金の支払額は約2700億円に上るなど、経済的損失も甚大でした。

特に山口県では、県内ほぼ全世帯で停電が発生するなど、深刻な被害に見舞われました。また、広島県の世界遺産である厳島神社も、国宝の建物の倒壊など、大きな被害を受けました。さらに、普段は台風の被害が少ないとされる北陸、東北、北海道でも50m/sを超える風が吹き荒れ、東北の日本海側では、塩害や落果による農作物被害が拡大しました。北海道大学では、ポプラ並木が倒れるなど、象徴的な被害も発生しました。

台風18号は、その予想外の進路、驚異的な勢力、そして広範囲にわたる甚大な被害から、日本において記憶に残る災害として、防災意識の向上に大きく貢献しました。各地の記録的な風速や降水量、高潮被害、そして人的・経済的損失は、改めて自然災害の脅威を私たちに突きつけました。

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