平成23年台風第15号

台風15号（2011年）の概要

2011年9月、日本列島に大きな被害をもたらした台風15号（アジア名：Roke）は、複雑な進路をたどり、各地に甚大な被害をもたらしました。この台風は、マリアナ諸島の北で発生した熱帯低気圧が発達し、9月13日に日本の南で台風となりました。その後、ゆっくりと西に進み、沖縄本島近海で停滞し、３日間かけて反時計回りに円を描くように海上を移動しました。その後、北東に進路を変え、速度を上げながら急速に発達し、大型で非常に強い台風となりました。

9月21日午後2時過ぎ、台風は静岡県浜松市付近に上陸し、中心気圧は950hPaを下回る戦後最大級の勢力でした。その後、東海、関東、東北地方を縦断し、同日午後10時頃には太平洋に抜けました。さらに北上を続け、北海道東部を暴風域に巻き込みました。台風から変わった温帯低気圧は、西高東低型の気圧配置を強め、日本海側を中心に雨が残りました。また、この温帯低気圧は、消滅することなくカナダに到達し、強風や大雨による被害を引き起こしました。

台風の進路と発達

9月13日午後9時：日本の南で台風15号が発生。
9月15日午後6時：南大東島に接近。沖縄本島近海で停滞し、迷走。
9月19日午後5時：大型の台風となる。午後9時には強い台風に。
9月20日午後9時：非常に強い台風に発達。
9月21日午前：紀伊半島が暴風域に入る。
9月21日午後2時：静岡県浜松市付近に上陸。
9月21日午後10時：福島県大熊町から太平洋に抜ける。
9月22日午後3時：千島近海で温帯低気圧に変わる。
9月28日：温帯低気圧が東経180度を超え、カナダに到達。

記録的な雨量と強風

台風の影響で、本州付近に停滞していた前線の活動が活発化し、各地で記録的な降水量となりました。特に、徳島市では9月15日から22日までの総雨量が722.5mmに達し、24時間、72時間、月間降水量の記録を更新しました。

静岡県静岡市葵区梅ヶ島：総降水量554.0mm
岐阜県多治見市多治見：総降水量496.0mm
静岡県浜松市天竜区（熊）：1時間雨量90.5mm
岐阜県多治見市（多治見宮川）：日降水量383.5mm

また、東海地方や関東甲信地方の沿岸部、伊豆諸島を中心に非常に強い風が吹き荒れました。

静岡県御前崎市：最大瞬間風速45.1m/s
東京都大島町：最大瞬間風速42.1m/s
東京都江戸川区：最大風速30.5m/s

被害状況

この台風により、河川の増水や土砂災害により16人が死亡、2人が行方不明となりました。東日本大震災の被災地でも死傷者が出ました。また、静岡県や神奈川県を中心に多数の負傷者が発生し、東北地方太平洋側では震災後最大の降水量と冠水を記録しました。

土砂災害では、静岡市や岐阜県御嵩町で住宅や車両が巻き込まれる被害が発生。岩手県二戸市や宮城県仙台市などでも土砂災害が発生しました。

強風により、神奈川県の橋ではトラックが横転し、千葉県富津市では鋼材が倒壊しました。また、神奈川県川崎市では貨物船が座礁し、横浜市では強風で転倒し死亡した人もいました。

交通機関への影響

鉄道では、東海地方から東北地方の多くの路線で運転見合わせが発生。JR東日本では、山形新幹線、東北新幹線、秋田新幹線で計画運休を実施しました。東海道新幹線も運転を見合わせ、多数の列車が運休や遅延となりました。身延線では土砂崩れが発生し、長期にわたり不通となりました。

航空便も多数が欠航し、成田空港発着便を中心に500便以上が欠航しました。

道路では、高松自動車道で路面崩落が発生し、一部区間が通行止めとなりました。

その他の影響

農業では、青森県でリンゴ園が浸水しました。スポーツイベントでは、サッカー、競馬、プロ野球、競輪など多くの競技が中止や延期となりました。

停電は静岡県を中心に広範囲に発生し、特に台風の進路にあたった地域で復旧に時間がかかりました。三重県立紀南高等学校では、台風12号の被害からの復旧が遅れていたところに、台風15号の影響で再び休校となるなど、学校運営にも大きな影響が出ました。

その他、H2Aロケットの打ち上げ延期、石油会社の操業中止、天然ダムの水位上昇、新燃岳の土石流の危険性など、様々な影響が出ました。

緊急対応と避難

台風に伴う大雨のため、岐阜県多治見市、兵庫県淡路島、宮崎県都城市、延岡市などに避難勧告が発令されました。特に、愛知県名古屋市では、庄内川の一部で越水が発生し、天白川などでも氾濫の可能性が高まったため、市内広範囲に避難指示・勧告が発令されました。

テレビ放送では、NHK総合テレビが番組編成を大幅に変更し、台風関連ニュースを終日放送しました。他のテレビ局も夕方のニュース番組の放送時間を拡大する措置をとりました。

この台風は、日本各地に甚大な被害をもたらし、人々の生活に大きな影響を与えた災害として記憶されることとなりました。

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