新燃岳

新燃岳（しんもえだけ）

新燃岳は、九州南部の霧島山の中央部に位置する標高1,421mの活[[火山]]です。円錐台形のなだらかな山容で、山頂には直径750mの円形火口があります。火口底にはかつて火口湖「新燃池」がありましたが、2011年の噴火で消滅しました。地質は、輝石安山岩の基盤の上に火砕丘が重なった構造です。

概要

新燃岳は、霧島山最高峰の韓国岳と霊峰高千穂峰の中間に位置しています。山頂の南側には「兎の耳」と呼ばれる2つの岩峰がそびえ立っています。1934年には霧島屋久国立公園の特別保護区域に指定されました。

かつては高千穂河原から中岳を経由する登山道が整備され、山頂付近はススキが広がる草原でした。ミヤマキリシマの群生地も点在していましたが、火山活動によって登山が禁止されることもありました。

噴火史

新燃岳の火山活動は、10万年前を境に古期と新期に分けられます。古期は約15万年前の活動で形成され、数万年の休止期間を経て約6万年前に活動を再開しました。新燃岳としての山体形成は約1万年前から始まり、過去にはプリニー式[[噴火]]を起こし、周辺に噴出物を堆積させています。有史以降では、1716年から噴火記録が残っています。

享保噴火（1716-1717年）

1716年から1717年にかけての一連の噴火活動は、水蒸気爆発から始まり、マグマ水蒸気爆発、そしてマグマ噴火へと変化しました。約1年半にわたって断続的に噴火が続き、火砕物降下によるマグマ噴出量は0.07DREkm³に達しました。この噴火では、死者5名、負傷者31名、家屋焼失などの甚大な被害が発生し、特に1716年11月の噴火では、火砕流により多くの犠牲者が出ました。また、降灰は遠く八丈島でも確認されています。

文政噴火（1822年）

1822年には、山頂付近で白煙が観察された後、水蒸気爆発を伴う噴火が発生しました。8合目付近には新たな火口が形成され、軽石や火砕流の噴出を伴う噴火が繰り返されました。南方へ流れる天降川では火山泥流が発生しました。

昭和噴火（1959年）

1959年には、中規模の噴火が発生しました。火口の北西約3kmの警察無線中継所が被害を受け、噴石や火山灰が広範囲に降り注ぎました。この噴火では、新燃池の北西岸から山腹にかけて約20個の小火口が形成されました。火山灰による農作物への被害や、鉄道のスリップ事故なども発生しました。

1991-2010年の活動

1991年に噴気活動を再開して以降、2005年から2007年にかけて山体膨張が観測されました。2008年には17年ぶりに水蒸気噴火が発生。2010年には小規模な噴火が確認され、噴火警戒レベルが引き上げられました。この間、山頂部の膨張と収縮が繰り返され、地下のマグマ活動が活発化していたことが示唆されています。

2011年の噴火

2011年1月19日に約半年ぶりに噴火した後、1月26日に準プリニー式[[噴火]]が発生。その後の1月27日には、52年ぶりとなる爆発的噴火が起こり、火口から北西以外ほぼ全方向へ火砕流が到達しました。火口内には溶岩ドームが出現し、観光名所だった新燃池は消滅しました。噴火による降灰は広範囲に及び、宮崎県南部を中心に大きな被害をもたらしました。この噴火では、火口の真下と北西約10kmの2箇所にマグマが貯留していることが判明しました。

2017年の噴火

2017年10月11日には、6年ぶりに噴火が発生し、噴煙が火口縁上300mまで上がりました。噴火は小規模でしたが、火山ガス放出量が急増し、警戒範囲が拡大されました。この噴火で噴出した物質には、深部から急減圧したマグマ物質が含まれていたことが報告されています。

2018年の噴火

2018年3月1日に噴火が確認され、その後も火山灰の放出が続きました。3月6日には、7年ぶりとなる爆発的噴火が発生し、火口内に溶岩が確認されました。溶岩流は火口縁を越えて流れ出し、周辺地域に影響を及ぼしました。この噴火は、溶岩の内部で火山ガスの圧力が高まって爆発したと推定されています。火口からの溶岩噴出は約1400万m³に達しました。

防災

新燃岳は現在も活発な活動を続けており、状況に応じて噴火警戒レベルが設定されています。最新の情報は気象庁のウェブサイトで確認できます。霧島山の山々は、「霧島山（新燃岳）」と「霧島山（御鉢）」の2つがそれぞれ警戒対象となっています。地方自治体も防災に関する情報をリーフレットなどで提供しています。

観測体制

新燃岳の火山活動は、気象庁や大学の研究機関によって常時観測されています。鹿児島地方気象台は、地震計や傾斜計、火口カメラなどを設置し、火山ガスの観測を行っています。東京大学地震研究所は、地震計、磁力計、GPS基地など約20箇所の観測点を配置しています。京都大学防災研究所は、伸縮計による地殻歪などを観測しています。防災科学技術研究所は、火山活動可視情報化システムを用いて観測を実施しています。

源流の河川

新燃岳を源流とする主な河川には、霧島川（天降川の支流）と高崎川（大淀川の支流）があります。これらの河川は、鹿児島湾や太平洋へと流れています。

新燃岳は、その歴史的な噴火活動と活発な火山活動により、常に警戒が必要な活[[火山]]です。関係機関による観測体制と、住民への防災情報提供が重要となります。

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