平福穂庵

平福穂庵 (ひらふく すいあん)

平福穂庵は、1844年11月27日に秋田県仙北市で生まれた日本の幕末から明治時代初期にかけて活動した日本画家です。彼は、同じく画家である平福百穂の父としても知られています。穂庵は、名を芸（うん）とし、通称を順蔵、別号を文池としていました。

生い立ちと教育

穂庵は、父・平福太治右衛門と母・キクの間に一人息子として生まれました。平福家は元々商人を営んでいましたが、穂庵の父は文浪という画号を持つ郷土の画家であり、祭りの人形や押絵なども手がけていました。穂庵は、地元の絵師である武村文海から円山四条派の絵を学び、さらには秋田の四条派絵師である長山孔寅の作品を手本にして独学で絵を学びました。彼はまた、角館の藩儒である森田珉岑に見出され、久保田の私塾でも学びました。

万延元年（1860年）から6年間、京に遊学し、古画の模写や風景写生に取り組みましたが、師匠に就かなかった理由は不明です。可能性としては、彼が過去の作品を模写することができる才能を持ち、満足できる指導者が見つからなかったためや、経済的余裕があったためとも考えられています。この間、京都で人気のあった画家、鈴木百年と親交を結び、独学の姿勢で絵を学ぶ姿勢に影響を受けていたと言われています。

帰郷後、穂庵は襖や屏風などの大作の依頼を受け、地元での人気を博しましたが、彼はこれに満足することはありませんでした。明治5年（1872年）には、商家の堺清兵衛と共に北海道を訪れ、その後も函館に居住し地域の文人たちと交流を深めました。函館を拠点に、平沢屏山から影響を受けたアイヌの絵画を得意とするようになりました。

画業と評価

穂庵の代表作《乞食図》は、明治13年（1880年）の第3回秋田県勧業博覧会で一等賞を獲得し、明治15年（1882年）の第1回内国絵画共進会でも褒状を受けました。この作品は、翌年の龍池会の展覧会でも展示され、地域での評価は高まりました。穂庵は第2回内国絵画共進会でも《北海道土人之図》で褒状を受賞し、想像を超えた画家として名を馳せていきました。彼は同年、パリ日本美術縦覧会にも《岩に鷲》を出品しました。また、明治18年（1885年）には東洋絵画会の学術委員に選任され、同会の展覧会を通じて多くの画家たちと交流しました。

穂庵は、独自の画風を築く傍らで、松本楓湖や柴田是真、渡辺省亭などの同時代の画家たちに認められる存在となりました。しかし、画家としての活動の最中、病を患い1890年に帰郷。秋田で46年の生涯を閉じました。

子孫と弟子たち

穂庵には四男一女が誕生しましたが、三男の健蔵は祖母の実家へ養子として行きました。四男の平福百穂は後に著名な日本画家となり、様々な弟子も持ちました。穂庵の弟子には寺崎広業、三森山静、辻九皐、竹村皇邨などがおり、その画風は四条派を基盤としていたものの、北国特有の土俗的な要素を反映した力強さを感じさせます。また、彼の末娘の子は武道家で教育学者の富木謙治です。

平福穂庵は、日本の絵画史における重要な人物であり、彼の作品は現在でも多くの人に愛されています。

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