角館

角館：みちのくの小京都、歴史と自然が織りなす美しい町

秋田県仙北市に位置する角館は、その歴史と美しい景観から「みちのくの小京都」と呼ばれる、魅力あふれる町です。国の重要伝統的建造物群保存地区にも指定されており、江戸時代の街並みが現在もそのまま残されています。

歴史の足跡：戦国時代から現代へ

角館の歴史は古く、戦国時代には戸沢氏の本拠地でした。関ヶ原の戦い後、戸沢氏が転封されると、佐竹氏が秋田に入部し、角館は久保田藩領となりました。1603年、蘆名義勝が角館に入り、城下町の建設が始まります。

当初、城下町は角館城のあった小松山の北麓にありましたが、水害や火災の多発を受け、1620年に現在の古城山の南麓に移転されました。この地は、西側の檜木内川が天然の堀となり、北は丘陵地、東には小高い丘が点在し、南が開けた、天然の要害に恵まれた立地でした。

新しい城下町では、道路の幅員を広げ、見通しを良くする工夫が凝らされ、下水整備や防火対策も万全に行われました。武家地、町人地、寺社が計画的に配置され、南北に細長い町の中央には土塁を築いた「火除け地」が設けられ、北側に武士の居住区である内町、南側に町人の居住地である外町が作られました。同年、一国一城令により角館城は破却されました。

蘆名氏の支配は3代で終わり、1656年には佐竹北家の佐竹義隣が角館に入りました。佐竹義隣の実父が高倉永慶、義隣自身が京の公家からの養子であったこと、そして2代佐竹義明の正室が公家・三条西家と縁のある家柄であったことから、角館には京文化が数多く流入しました。この影響は、小倉山などの京にちなんだ地名にも見ることができます。

戊辰戦争では久保田藩が新政府側に付いたため、奥羽越列藩同盟軍の攻撃を受けました。角館は玉川を盾に防戦し、二日間にわたる攻撃を凌ぎましたが、孤立を深めていきました。しかし、同盟軍の撤退により、角館は戦禍を免れました。

廃藩置県後は、郡の中心地が大曲に移りましたが、1976年、武家屋敷地区が「重要伝統的建造物群保存地区」に選定されたことをきっかけに、観光地として発展を始めました。秋田新幹線の開業も追い風となり、年間200万人以上の観光客が訪れるようになりました。

美しい桜と伝統文化：観光のハイライト

角館は、桜の名所としても有名です。武家地のシダレザクラは「角館のシダレザクラ」として国の天然記念物に、檜木内川左岸堤防の桜並木は「檜木内川堤（サクラ）」として国の名勝に指定されています。「桧木内川堤・武家屋敷」として日本さくら名所100選にも選ばれています。樹齢300年を超える老樹を含む約400本のシダレザクラが、古い町並みを彩ります。また、檜木内川堤防のソメイヨシノは、皇太子の誕生を祝って植えられたもので、約2キロメートルにわたる桜のトンネルが観光客を魅了します。

ゴールデンウィークの時期と桜の開花時期が重なっていたこともあって、角館は全国から多くの観光客を集めてきましたが、近年は開花時期の早まりが懸念されています。

角館の文化と伝統：武家屋敷、工芸品、祭事

角館では、藩政時代の地割が現在も踏襲されており、防衛を考慮したクランク形の道路などが残されています。武家屋敷通りには、石黒家、青柳家などの武家屋敷が数多く現存し、NHK連続テレビ小説「雲のじゅうたん」などのロケ地にもなっています。

町人地には老舗商家が多く、伝統的な工芸品である桜皮細工やイタヤ細工も盛んです。桜皮細工は、ヤマザクラの皮を使った工芸品で、明治維新後、士族授産の一環として発展しました。イタヤ細工は、イタヤカエデの幹を細く割いて編んだ工芸品です。

角館では、火振りかまくら、桜まつり、角館のお祭りなど、様々な伝統行事が行われています。角館のお祭りは、国の重要無形民俗文化財に指定されています。

角館は、歴史と自然、そして伝統文化が調和した、まさに「みちのくの小京都」と言える町です。訪れる人々を、その魅力で魅了し続けています。

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