平群村

平群村（へぐりむら）は、かつて千葉県安房郡に存在した自治体です。より古い時代には平郡に属しており、現在の千葉県南房総市の北部地域にあたる、かつての富山町の一部であった区域に位置していました。村の名称は、この地にかつて存在した古い郡名である平群郡に由来しており、地域の歴史の深さを示唆しています。

この村は、明治時代の地方制度改革の中で誕生しました。具体的には、1889年（明治22年）4月1日に町村制が施行された際に、それまで個別に存在していた平久里中村、山田村、荒川村、平久里下村、犬掛村、吉沢村、川上村、井野村という八つの村が合併し、新たな自治体として「平群村」が発足しました。発足当初、村は平郡に属していましたが、その後の郡の再編に伴い、1897年（明治30年）4月1日には周辺の郡とともに統合され、安房郡の一部となりました。これにより、平群村は安房郡の所属となりました。

平群村としての歴史は、およそ66年間続きました。昭和の大合併と呼ばれる市町村合併の波の中で、1955年（昭和30年）2月11日、平群村は隣接していた岩井町と合併しました。この合併により、新しい町として「富山町」が誕生し、平群村はその自治体としての歴史を終え、廃止されました。富山町はその後も約半世紀存続しましたが、平成期におけるさらなる広域合併の流れの中で、2006年（平成18年）3月20日に、富浦町、白浜町、千倉町、丸山町、和田町、三芳村といった安房郡内の他の町や村と合併し、「南房総市」が新設されました。現在、かつての平群村があった地域は、この南房総市の一部となっています。

村の名前である「平群」は、古代の地理書である『和名抄』にも記述が見られるほど古い歴史を持つ地名であり、かつて安房国の国府がこの平群郡内に置かれていた可能性も指摘されています。村が廃止された後も、その名前は完全に失われたわけではありません。現在の南房総市には、「平久里」という大字が存在しており、これは読みこそ同じ「へぐり」であるものの、漢字表記を変えて旧村名の一部地域を示しています。また、地域の教育機関である「南房総市立平群小学校」にもその名が引き継がれており、この地がかつて平群村であったことを今に伝えています。これらの地名や学校名は、村の歴史を記憶し、地域の人々に親しまれています。

平群村は、明治から昭和にかけての地方自治の変遷を示す一例として、千葉県の廃止市町村の歴史においても重要な位置を占めています。かつての村域は、現在、自然豊かな南房総市の一部として、穏やかな景観を保ちつつ、新たな時代の歩みを続けています。

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