平良木登規男

平良木 登規男

日本の著名な法学者である平良木 登規男（ひららぎ ときお）は、1942年2月5日に北海道釧路市で生を受け、2025年1月8日に永眠しました。その専門分野は刑事訴訟法、環境法、そして刑事司法制度論と多岐にわたり、晩年には経済刑法にも深い関心を寄せていました。特に、日本の司法制度改革において、市民が刑事裁判に参加する裁判員制度の導入に向けた議論と検討では、中心的なメンバーとして重要な貢献を果たしています。

経歴

平良木氏のキャリアは、法曹界と教育界の両方に及びます。慶應義塾大学法学部で法律学を修め、同大学大学院法学研究科公法学専攻修士課程を修了した後、司法修習生（第21期）となりました。

1969年、裁判官として任官し、仙台地方裁判所を皮切りにキャリアをスタートさせます。その後、東京地方裁判所、青森地方・家庭裁判所、再び東京地方裁判所と各地で判事補を歴任。1979年には東京地方裁判所判事に昇格し、翌年には裁判所書記官研修所（現在の裁判所職員総合研修所）で教官を務めました。1983年からは札幌地方裁判所判事および札幌高等裁判所判事職務代行、1985年には札幌高等裁判所判事として勤務し、実務家としての研鑽を積みました。

1987年、裁判官を退き、慶應義塾大学法学部の助教授に転じます。翌年にはドイツのケルン大学に留学し、研究活動に専念。1989年には、裁判官時代の経験と研究成果を集大成した論文「刑事控訴審の研究」により、慶應義塾大学から法学博士号を取得しました。1991年には同大学法学部教授に昇任し、後進の指導にあたります。また、1998年から2002年まで慶應義塾中等部の部長を務めるなど、大学行政にも携わりました。

学術研究と教育に加え、司法制度の改善にも積極的に関わります。1999年から2004年まで司法試験第二次試験の考査委員として刑事訴訟法の分野を担当。特に、2002年からは司法制度改革推進本部の委員として、裁判員制度・刑事検討会や公的弁護検討会のメンバーとなり、日本の司法の将来像を描く議論に深く関与しました。2004年には慶應義塾大学大学院法務研究科（法科大学院）の創設に関わり、教授および委員長を務め、新たな法曹養成教育の確立に尽力しました。同時期には法科大学院協会の理事や中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会の委員としても活躍。また、2006年には株式会社岡三証券グループの社外監査役に就任するなど、多方面でその識見を活かしました。

2007年には慶應義塾大学名誉教授の称号を授与され、その後は活動の場を大東文化大学大学院法務研究科（法科大学院）に移し、教授として刑事訴訟法を講じました。2010年からは同研究科長として法科大学院の運営を担い、2017年に同大学を定年退職しました。

2025年1月8日、82歳で逝去。長年にわたる法学研究、法曹実務、そして司法制度改革への貢献が認められ、死後、従四位に叙され、瑞宝小綬章が追贈されました。

主著

平良木登規男氏の主要な著作には、以下のものが挙げられます。

『刑事控訴審』（成文堂、1990年）
『捜査法 第2版』（成文堂、2000年）
『刑事訴訟法１』（成文堂、2009年）
『刑事訴訟法２』（成文堂、2010年）
『判例講義 刑事訴訟法』（悠々社、2012年）
『国民の司法参加と刑事法学』（慶應義塾大学出版会、2014年）

これらの著作は、刑事訴訟法を中心とした氏の研究成果を示すものであり、実務家や研究者、学生に広く読まれています。

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