平野平左衛門

平野平左衛門：日本における鉄道の夜明けを照らした機関士

平野平左衛門(1849-1927)は、日本における鉄道の歴史にその名を刻んだ重要な人物です。彼は、日本人で初めて鉄道機関士となったパイオニアとして知られています。その生涯は、日本の近代化と鉄道発展の歩みと深く関わっており、彼の業績は現代においても高く評価されています。

草創期の苦闘と技術習得

1849年、江戸に生まれた平野は、代々加賀藩の刀剣商を営む家系に育ちました。しかし明治維新後、家業は衰退。25歳の時、新橋火夫見習として鉄道に身を投じます。当初は機関車の清掃や給水、石炭運搬といった雑用が主な仕事でした。当時の機関士は全員が外国人であり、高給取りで、日本人との摩擦も少なくありませんでした。そのため、日本人の機関士育成は喫緊の課題でした。

平野は、火夫の中から選ばれた少数の者と共に、機関車の構造、操作方法、緊急時の対処法などを学びました。機関車の分解・組立まで習得後、実地訓練を開始。山下熊吉らと共に、新橋-横浜間の複線化工事の運転に従事しました。当初は苦労しましたが、経験を積み重ね、外国人機関士と同等の能力を身につけました。外国人監督の下、時刻表通りの運転や入換運転を行い、やがて単独での運転も可能となりました。

日本人機関士の夜明けとその後

1879年、建築師長のホルサムの上申により、平野は落合丑松、山下熊吉らと共に日本人初の機関士として正式に登用されました。同年9月1日からは、新橋-横浜間で列車運転に従事。その後も日本人機関士が増加し、1880年11月1日以降、新橋-横浜間の運転は全て日本人機関士によって行われるようになりました。平野の努力と才能が、日本の鉄道技術の自立に大きく貢献したと言えるでしょう。

その後、平野は山北機関庫主任、沼津機関区主任、名古屋機関区主任などを歴任。1889年には、丹那トンネルのない時代に、箱根の山越えを担う御殿場線で、アメリカの機関車の試運転を成功させました。この成功は、平野の卓越した運転技術の高さを示すものとなりました。1897年には新橋機関区主任に返り咲きましたが、まもなく日本鉄道の上野機関庫長に転じました。しかし1898年の機関車乗務員ストライキの責任を取って辞任。その後、上武鉄道（秩父鉄道）、南満州鉄道で勤務し、1927年に大連で亡くなりました。

鉄道一家と続く系譜

平野家には、鉄道業界で活躍した人物が多くいました。長男は朝鮮鉄道の機関区長、次男は満鉄の機関庫助役、三男は鉄道省を経て満鉄に出向。孫や曾孫にも機関士がおり、その系譜は現代まで続いています。驚くべきことに、秋篠宮家の紀子妃殿下は平野平左衛門の玄孫にあたります。

平野平左衛門の功績

平野平左衛門の生涯は、日本の近代化と鉄道発展における重要な一章です。彼の努力と技術は、多くの日本人技術者の育成と、日本の鉄道技術の自立に大きな影響を与えました。彼の功績は、日本の鉄道史に永遠に刻まれるべきものです。彼の物語は、困難に立ち向かい、夢を実現しようとした先駆者たちの姿を示す、感動的な物語として語り継がれていくことでしょう。

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