平高望

平高望：坂東[[平氏]]勢力拡大の礎を築いた人物

平高望（たいら の たかもち）、通称高望王は、平安時代中期に活躍した重要な歴史人物です。桓武天皇の血筋を引く皇族であり、後に勢力を拡大する高望王流桓武平氏の祖として知られています。従五位下、正親正、上総介の官職を歴任しました。

臣籍降下と上総国への赴任

寛平元年（889年）、宇多天皇の命により臣籍降下し、平朝臣の姓を賜りました。同時に上総介に任じられた高望王は、異例ともいえる行動に出ます。当時、上級国司が任地に赴任しない「遥任」が珍しくなかった中、高望王は長男の国香、次男の良兼、三男の良将を伴い、自ら上総国へと赴任したのです。

昌泰元年（898年）、上総国武射郡に屋形を構え、同地を拠点としました。任期終了後も帰京せず、現地に根を下ろすことを選択したのです。この決断が、後の高望王流桓武平氏の繁栄に大きく影響を与えました。

在地勢力との連携と領地開発

高望王とその子息たちは、上総国での生活を基盤に、積極的に地域社会との関係を構築しました。国香は前常陸大掾の源護の娘と、良将は下総国相馬郡の犬養春枝の娘と結婚するなど、婚姻関係を通じて有力な在地勢力と結びつきました。

それにとどまらず、高望王親子は常陸国、下総国、上総国の未墾地を開墾し、農業経営に力を注ぎました。自らが開発者となり生産者となることで経済的な基盤を固め、開発した土地の権利を守るために武士団を形成していったのです。この武士団が、後の高望王流桓武平氏の軍事力の中核となりました。

水上交通の掌握と勢力拡大

土地開発と農業経営に加え、高望王は水上交通の掌握にも注力しました。当時、交通手段として重要な役割を果たしていた河川や沿岸部を制圧することで、物資の輸送や情報伝達を掌握し、勢力拡大に役立てたものと考えられています。

『平家勘文録』には、民部卿宗章の反乱鎮圧の功績により上総介に任じられ、平姓を賜ったという記述がありますが、裏付けとなる確かな証拠は見つかっていません。

高望王の功績と坂東[[平氏]]の隆盛

高望王は、単なる皇族ではなく、積極的な土地開発、在地勢力との連携、そして水上交通の掌握によって、坂東地方に新たな勢力を築いた人物と言えます。彼の活動は、後の坂東[[平氏]]の隆盛の基礎を築き、武士社会の発展に大きな影響を与えたことは間違いありません。

高望王とその子息たちの努力によって築かれた基盤は、その後、平将門らによって受け継がれ、さらに発展していくこととなります。彼の功績は、平安時代の中期における社会構造の変化を理解する上で、非常に重要な意味を持つと言えるでしょう。

参考文献

梶原正昭『将門記 1』東洋文庫、1975年
宮崎康充『国司補任 第3』続群書類従完成会、1990年
国史大辞典編纂委員会『国史大辞典 第八巻』吉川弘文館、1987年
千葉県山武郡教育会『山武郡郷土誌』臨川書店〈千葉県郷土誌叢刊 復刻版〉、1987年
下中直人『世界大百科事典』（改訂新版）平凡社〈第6巻(カヘナ-キス)〉、2007年
入間田宣夫『兵たちの登場』（兵たちの時代 1）高志書院、2010年

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