幸福追求権

幸福追求権とは

幸福追求権は、日本国憲法第13条において明記されている「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」を指します。この権利は、アメリカ独立宣言の「生命、自由及び幸福追求の権利」から影響を受けており、人権の概念の一部として重要な役割を果たしています。アメリカの独立宣言は、自然権としての人権の発展に寄与し、世界人権宣言や生存権に関する起源ともなっています。

専門的な解釈

幸福追求権の解釈については、初期の学説においてはこの権利は具体的権利性を否定され、憲法の14条以下の人権の総称にすぎないと考えられていました。しかし、1960年代に入ると、日本の経済や社会が変化し、より多くの権利が要求されるようになりました。そのため、学説も進展し、現在では13条には具体的権利性があるとする解釈が主流になっています。

具体的権利性の解釈

幸福追求権に関する解釈は大きく分けて二つの説に分類されます。1つは「具体的権利性の否定説」であり、これは13条が規定されている権利の総称にすぎないとの立場です。一方で、「具体的権利性の肯定説」には、以下の二つのアプローチがあります。まず、「人格的利益説」は、個人の人格的生存に欠かせない利益がこの権利に含まれると解釈します。次に、「一般的自由説」では、一般的な行為の自由を保障する権利として捉えられます。

新たに認められた権利

幸福追求権の範疇には、近年新たに認められた権利も存在します。具体的には、プライバシー権、嫌煙権、環境権、日照権、健康権、アクセス権、平和的生存権などがあります。これらの権利の中で、判例としてはプライバシー権としての肖像権が認められています。代表的な事件としては、京都府学連事件があり、この事件では肖像権に関連する重要な判断が下されました。

主要な関連判例

幸福追求権の理解を深める上で、いくつかの重要な判例が挙げられます。これには、前科照会事件（昭和56年4月14日判決）、どぶろく裁判（平成元年12月14日判決）、ノンフィクション「逆転」事件（平成6年2月8日判決）、エホバの証人輸血拒否事件（平成12年2月29日判決）があります。これらの判例は、幸福追求権の具現化や解釈における指針となっています。

研究文献と関連項目

このテーマに関する文献として、佐藤幸治著『幸福追求権』（有斐閣、2000年）、芦部信喜『憲法 新版』（岩波書店、1997年）などが重要です。また、自己決定権、自由権、自然権、愚行権など、関連する概念も併せて理解を深めるために考慮することが有益です。さらに、コトバンクにおいても「幸福追求権」に関する情報を確認することができます。

もう一度検索