幼児キリストと洗礼者聖ヨハネ、二人の天使

幼児キリストと洗礼者聖ヨハネ、二人の天使

ピーテル・パウル・ルーベンスとフランス・スナイデルスという、17世紀フランドルを代表する二人の巨匠による合作「幼児キリストと洗礼者聖ヨハネ、二人の天使」は、1615年から1620年頃に制作されました。この作品は、ルーベンスが人物像を、スナイデルスが静物部分をそれぞれ担当した、両画家の協力関係を示す好例です。オーク板に油彩で描かれたこの絵画は、1720年にはウィーンの帝室画廊に記録され、現在は美術史美術館の貴重なコレクションとして展示されています。

作品の特徴

ルーベンスとスナイデルスは、1610年代後半から、花綱や果物籠をモチーフにした作品を共同で制作していました。本作もその流れを汲むもので、他の共同制作作品には、「ケレスの像」、「果物綱」、「二人のプットのいる果物と花の飾り」などがあります。これらの作品と比べると、本作はサイズ的にはやや小ぶりです。

本作において、ルーベンスは主題を神話からキリスト教へと転換させています。幼児イエスと洗礼者ヨハネの背後に描かれた天使たちは、「ケレスの像」に描かれたプットたちと類似性が見られます。一方、イエスとヨハネは、「果物綱」に描かれた幼い少年に容貌がよく似ています。また、二人のポーズは古代彫刻の影響を受けていると考えられます。

洗礼者ヨハネは、左手で仔羊を抱え、右手にはブドウの一房を持っています。これらのモティーフはルーベンスの手によるものかもしれません。しかし、右下の果物籠はスナイデルスの特徴をよく示しており、彼の独立した作品にも見られるモティーフです。

他の共同制作作品

ケレスの像（1615年頃）エルミタージュ美術館（サンクトペテルブルク）
果物綱（1616-1617年頃）アルテ・ピナコテーク（ミュンヘン）
* 二人のプットのいる果物と花の飾り（1620-1630年）プラド美術館（マドリード）

これらの作品からも、ルーベンスとスナイデルスの協力関係、そしてそれぞれの卓越した技術を垣間見ることができます。

まとめ

「幼児キリストと洗礼者聖ヨハネ、二人の天使」は、バロック美術の巨匠二人の才能が結実した、非常に魅力的な作品です。ルーベンスの描く躍動感あふれる人物像と、スナイデルスの描く写実的な静物が、見事に調和しています。この作品は、フランドル絵画の豊かな伝統を今に伝える貴重な遺産と言えるでしょう。

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