ケレスの像

『ケレスの像』について

『ケレスの像』（露: Статуя Цереры、英: A Statue of Ceres）は、フランドルのバロック期を代表する画家ピーテル・パウル・ルーベンスが、1615年ごろにオーク板に油彩で描いた絵画です。この作品は、古代ローマの豊穣の女神ケレスに、プット（幼い天使）が花輪を捧げる場面を描いています。

作品の構成と特徴

絵画の中心には、建築的な枠組みの中の壁龕（へきがん）に立つケレスの彫像が描かれています。この彫像は、ルーベンスがアントウェルペンに所有していた家の中庭に見られるものと多くの類似性を示しています。

ルーベンスは、この作品に自伝的な要素を加えていると考えられています。前景中央に描かれたプットの顔は、ルーベンスの息子アルベルト（1614年生まれ）の顔をモデルにしているという説があります。また、絵画の制作年代を示すように、ルーベンスは細かな筆致で量感を巧みに表現しています。

特に注目すべきは、画面を飾る2本の果物と野菜の花綱です。これらの花綱は、ルーベンスの協力者であったフランス・スナイデルスによって描かれたと考えられています。スナイデルスが描いた花綱は、半透明のブドウの皮の描写において、他の作品との類似性が顕著です。

エルミタージュ美術館の初期の目録では、スナイデルスではなく、ヤン・ブリューゲル（父）が協力者として挙げられていました。しかし、ヤン・ブリューゲルのより精緻で細密な画風を考慮すると、この説は信憑性に欠けると考えられています。

ルーベンスとスナイデルスは、『ケレスの像』以降も、花綱や果物籠を主題とした作品を共同で制作しています。これらの作品には、『果物綱』（1616-1617年ごろ、アルテ・ピナコテーク、ミュンヘン）、『幼児キリストと洗礼者聖ヨハネ、二人の天使』（1615-1620年ごろ、美術史美術館、ウィーン）、『二人のプットのいる果物と花の飾り』（1620-1630年、プラド美術館、マドリード）などがあります。

作品の歴史

『ケレスの像』は、1760年にデン・ハーグで1210ギルダーで売却されました。その後、8年後にブリュッセルでカルル・デ・コーベンのコレクションから、エルミタージュ美術館の収蔵品として加えられました。

ギャラリー

ルーベンス、スナイデルス、ヤン・ウィルデンス『果物綱』（1616-1617年ごろ）、アルテ・ピナコテーク、ミュンヘン
ルーベンス、スナイデルス『幼児キリストと洗礼者聖ヨハネ、二人の天使』（1615-1620年ごろ）、美術史美術館、ウィーン
ルーベンス (工房)、スナイデルス、ヤン・ブリューゲル (父)『二人のプットのいる果物と花の飾り』（1620-1630年ごろ）、プラド美術館、マドリード

参考文献

『ルーベンス 栄光のアントワープ工房と原点のイタリア』、Bunkamuraザ・ミュージアム、毎日新聞社、TBS、2013年刊行

外部リンク

* エルミタージュ美術館公式サイト、ピーテル・パウル・ルーベンス『ケレスの像』 (英語)

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