広島合同貯蓄銀行

株式会社広島合同貯蓄銀行：広島銀行の源流

株式会社広島合同貯蓄銀行は、1921年（大正10年）12月に広島市で設立された貯蓄銀行です。現在の広島銀行のルーツの一つとして、その設立から終焉まで、激動の時代を駆け抜けた歴史を辿ります。

設立の背景

明治時代、大規模銀行を補完する存在として、小口貯蓄を専門に扱う貯蓄銀行が各地に誕生しました。1890年（明治23年）の貯蓄銀行条例公布以降、広島県下でも1895年（明治28年）の広島貯蓄銀行・尾道貯蓄銀行を筆頭に、多くの貯蓄銀行が設立されました。しかし、これらの銀行は次第に業務を拡大し、普通銀行と変わらない存在となっていきます。さらに、大正時代の不況により、中小貯蓄銀行の経営基盤の脆弱さが露呈しました。

1921年（大正10年）に貯蓄銀行法が制定されると、貯蓄銀行の免許基準は厳格化され、貯蓄銀行と普通銀行の兼業が困難になりました。これにより、多くの貯蓄銀行は普通銀行への転換、あるいは貯金業務への専念を迫られることになります。その結果、広島県下の貯蓄銀行は姿を消すことになりました。

設立と営業の拡大

広島県から貯蓄銀行が消滅したことを受け、県は貯蓄奨励の観点から県内銀行の合同出資による新たな貯蓄銀行の設立を働きかけます。この呼びかけに応じ、1921年10月には県下の有力財界人21名が県庁に集まり、新銀行の設立を協議しました。同年12月には設立発起人会が開催され、沢原銀行頭取であった沢原俊雄が頭取に選ばれ、広島合同貯蓄銀行が設立されました。設立時の資本金は1,000,000円、払込金は500,000円。翌1922年1月には銀山町に本店を構え、営業を開始しました。しかし、設立から開業までの準備期間が短かったため、当初は本店のみでの営業となり、県下14行の104店舗を代理店として委託する形となりました。役員も芸備銀行・沢原銀行からの応援を得ていました。

その後、1924年（大正13年）には呉・福山・尾道に支店を開設するなど店舗網を整備し、本店も上流川町から下柳町へと移転。業務拡大を続けました。1927年4月の金融恐慌の際には、本店および代理店が取り付け騒ぎに見舞われましたが、沢原頭取らの尽力により預金者を安心させ、危機を乗り越えました。この出来事を経て、同行は昭和期に入り急速に業績を伸ばしました。

（新）藝備銀行設立への参加と終焉

戦時下の「一県一行」政策により、広島合同貯蓄銀行は呉銀行・（旧）芸備銀行・備南銀行・三次銀行との合併を推進。第二次世界大戦末期の1945年5月1日、（新）藝備銀行が発足し、解散しました。これにより、広島県下に本店を置く貯蓄銀行は消滅しました。旧本店は芸備銀行下柳町支店となりました。

藝備銀行は戦後の1950年に広島銀行へと改称し、現在に至ります。

本店のその後

下柳町にあった旧本店は、（新）藝備銀行設立後は同行の下柳支店となりましたが、同年7月には支店の統合により閉鎖。建物は広島県警察部に貸し出され、東警察署として使用されました。1945年8月6日の原爆投下では、爆心地から1.21kmの距離にあったにもかかわらず、署員の消火活動により全焼を免れ、多くの被爆者の救護所として利用されました。一時的に臨時の県庁としても機能しました。

戦後、東警察署として使用された後、1950年に広島銀行に返還され、銀山町支店として営業を再開。長らく使用されましたが、1988年9月に建て替えのため解体されました。現在は、跡地に建設された「ひろしまハイビル21」の南西角に、旧建物の正面玄関部分がモニュメントとして保存されています。

年表

1921年（大正10年）
10月：県庁での財界人会合で新貯蓄銀行設立を協議
12月：設立発起人会開催。沢原俊雄が頭取に就任
12月24日：広島合同貯蓄銀行の営業認可
1922年（大正11年）1月6日：銀山町に本店を置き開業
1924年（大正13年）
3月：呉支店を開設
5月：福山支店を開設
7月：尾道支店を開設
1927年（昭和2年）4月：金融恐慌により取り付け騒ぎが発生
1937年（昭和12年）10月：下柳町に本店を新築移転
1945年（昭和20年）
4月25日：呉銀行・（旧）芸備銀行・備南銀行・三次銀行との合併による（新）藝備銀行の新立合併認可
5月1日：（新）藝備銀行の開業に伴い解散。旧本店は同行の下柳支店となる
6月：支店統合により下柳支店が廃止。建物は広島東警察署庁舎として貸与
8月6日：原爆被災により東警察署が大きな被害を受ける
1950年（昭和25年）：広島銀行銀山町支店として営業再開
1988年（昭和63年）9月：建て替えのため銀山町支店が解体

歴代頭取

初代：沢原俊雄（1921年12月 - 1937年12月）
二代：日野易造（1937年12月 - ）

参考文献

田辺良平 『ふるさとの銀行物語［広島編］』 菁文社、2005年
被爆建造物調査委員会 『ヒロシマの被爆建造物は語る』 広島平和祈念資料館、1996年

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