備南銀行

備南銀行（びなんぎんこう）

備南銀行は、1930年（昭和5年）10月に尾道市で設立された地方銀行であり、現在の広島銀行の前身となった銀行の一つです。備後地域における銀行合同構想を背景に誕生し、その短い歴史の中で地域の金融に貢献しました。

沿革

備後諸行の合同構想

1919年（大正8年）に始まった戦後恐慌を受け、広島県下の中小銀行が経営危機に陥る中、政府と広島県は銀行合同政策を推進しました。1920年には県下7行が合併し（旧）芸備銀行が設立されましたが、備後地域でも同様の動きがありました。

1926年1月には、備南地域の尾道銀行・福山銀行・鞆銀行・松永実業銀行と、備北地域の世羅銀行・芦品銀行・備後銀行の計7行の合同が計画されました。続いて1927年（昭和2年）10月には、世羅銀行と山岡銀行・三次銀行・三次実業銀行の備北4行の合同が進められましたが、一部銀行の反対により実現しませんでした。これらの銀行のうち、世羅銀行と山岡銀行は、備北地域よりも備南地域の銀行との統合を模索するようになります。

1929年には、尾道・世羅・山岡・備後の4行による合同が進められ、同年1月には備後銀行を除いた3行による新立合併の覚書が交わされ、翌1930年7月には合併を承認する株主総会が開かれました。

備南銀行の発足と他行の動向

1930年（昭和5年）10月、尾道銀行・世羅銀行・山岡銀行の3行が新立合併し、備南銀行が設立されました。初代頭取には、尾道銀行頭取であった鳥居哲が就任しました。設立時の資本金は200万円、払い込み金は50万円でした。株式の約14%は山岡銀行頭取であった山岡儀平とその一族が保有し、山岡と世羅銀行頭取の毛利隆が取締役に就任しました。役員12名のうち半数は、合併銀行中で最も規模の大きかった尾道銀行出身者が占めました。

翌11月には、尾道市の本店（旧尾道銀行本店）のほか、前身3行から引き継いだ9支店、7出張所、24代理店を開業しました。備南銀行は尾道唯一の本店銀行として、尾道商工業者からの支援を受け、尾道市の金庫業務を受託しました。

一方、他の備南地域の銀行は、備後銀行が1934年に藝備銀行に買収され、福山銀行・松永実業銀行・西原銀行が第一合同銀行（岡山県）、鞆銀行・桑田銀行が山陽銀行（岡山県）に合併され、最終的に中国銀行の発足へと合流しました。その結果、備南地域は現在、広島銀行と中国銀行が入り組む営業圏となっています。

（新）芸備銀行の設立

戦時体制下で「一県一行」を求める国・県の圧力が強まると、備南銀行は（旧）芸備銀行・広島合同貯蓄銀行・呉銀行・三次銀行とともに、（新）芸備銀行の新立合併に参加し、1945年（昭和20年）5月の同行開業に際して解散しました。これにより、尾道に本店を置く銀行は消滅し、尾道市の金庫業務は、備南銀行本店を継承する芸備銀行（のち広島銀行）尾道東支店に引き継がれました。

年表

1926年（大正15年）1月：尾道銀行・世羅銀行など備後地域7行の合同工作
1927年（昭和2年）10月：世羅銀行・山岡銀行など備北4行の合同工作
1929年（昭和4年）1月：尾道銀行・世羅銀行・山岡銀行3行による合併覚書の調印
1930年（昭和5年）
10月9日：尾道銀行・世羅銀行・山岡銀行の3行の新立合併による備南銀行の設立認可
10月31日：備南銀行の創立総会（新立合併）
11月1日：尾道市久保町の旧尾道銀行本店を本店として開業。9支店を設置
1932年（昭和7年）4月：双三郡吉舎町に吉舎支店を新設
1933年（昭和8年）9月：矢野支店を甲奴郡上下町に移転し上下支店と改称
1945年（昭和20年）
4月25日：当行および呉銀行・（旧）芸備銀行・広島合同貯蓄銀行・三次銀行の5行合併による（新）芸備銀行の新立合併認可
5月1日：（新）芸備銀行の新立合併・開業。備南銀行解散

当行に統合された銀行

尾道銀行
世羅銀行
山岡銀行

歴代頭取

初代：島居哲（1930年10月 - 1935年7月）
2代：橋本吉次郎（1935年7月 - 1945年4月）

店舗

設立時には尾道市の本店のほか、9支店・7出張所・24代理店が置かれ、その後1支店が増設されました。

本店

尾道市久保町の本店は、1923年竣工の尾道銀行本店であり、鉄筋コンクリート構造2階建ての建造物です。1945年5月の（新）芸備銀行への新立合併の後には、同行（広島銀行）の尾道東支店となり、その後市役所前出張所となりましたが、2004年に店舗としては廃止されました。現在は尾道市の重要文化財となり、おのみち歴史博物館として使用されています。

支店

甲山支店（世羅郡甲山町甲山（現・世羅町）） - 旧世羅銀行本店。
矢野支店（甲奴郡矢野村矢野（現・府中市）） - 旧山岡銀行本店。1933年（昭和8年）9月に甲奴郡上下町に移転し「上下支店」と改称。
広島支店（広島市橋本町（現・中区）） - 旧尾道銀行広島支店。
大手町支店（広島市大手町） - 旧尾道銀行大手町支店。
福山支店（福山市船町） - 旧尾道銀行福山支店。
府中支店（芦品郡府中町府中（現・府中市）） - 旧尾道銀行府中支店。
三原支店（御調郡三原町三原（現・三原市）） - 旧尾道銀行三原支店。
久井支店（御調郡久井村江木（現・三原市）） - 旧世羅銀行久井支店。
徳良支店（世羅郡神田村下徳良（現・三原市）） - 旧世羅銀行徳良支店。
* 吉舎支店（双三郡吉舎町（現・三次市）） - 1932年（昭和7年）4月新設。

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