広島晃甫

広島晃甫：夭折の天才画家、そして現代へのレガシー

広島晃甫（ひろしま こうほ、本名：広島新太郎）は、明治22年（1889年）11月23日、徳島県徳島市に生まれました。昭和26年（1951年）12月16日、52歳という若さでこの世を去りました。短い生涯でしたが、日本の近代日本画壇にその名を刻んだ、重要な画家の一人です。

晃甫は、香川県立工芸学校（現香川県立高松工芸高等学校）を経て、東京美術学校日本画科（現東京藝術大学）を卒業しました。在学中から才能を認められ、卒業後は精力的に制作活動を行いました。

彼の芸術的探求は、洋画への造詣も深く、白馬会洋画研究所に学ぶなど、多様な画風を取り入れました。萬鉄五郎らと共にアブサント会を結成したというエピソードからも、その自由奔放な芸術家気質が伺えます。また、長谷川潔、永瀬義郎らと共に日本版画倶楽部を結成し、版画制作にも取り組みました。

画業における大きな転機となったのは、帝展での受賞です。第1回、第2回帝展で特選を受賞し、一躍注目を集める存在となりました。その後も帝展審査員や新文展審査員などを歴任し、近代日本画壇において重要な役割を担いました。

晃甫の代表作は数多く存在します。国立美術館には「泊船」（1916年）、「青衣の女」（1921年）、「国光瑞色」（1942年）などが収蔵され、その独特の画風と高い技術を見ることができます。徳島県立近代美術館には「赤装女」（1941年）が所蔵されています。これらの作品は、著作権の保護期間が満了しており、現在ではパブリックドメインとなっています。誰でも自由に鑑賞、研究、複製することができる貴重な文化遺産となっています。

近年では、漫画作品『9で割れ！！―昭和銀行田園支店』（矢口高雄）にも登場しています。この作品は、作者である矢口高雄氏の銀行員時代の自伝的な物語です。秋田県内で下宿していた矢口氏の家の隣家、いわば「本家」に戦時中、晃甫が滞在していたというエピソードが描かれています。物資の乏しい時代の中で、近くの梅の木を題材にした襖絵「紅梅白梅之図」を描いたとされています。この襖絵は習作で、完成品は国立美術館に所蔵されているという記述もあります。

このように、広島晃甫の作品は、美術館に収蔵されるだけでなく、人々の記憶や生活の中に息づいていると言えるでしょう。彼の作品は、時代を超えて多くの人々を魅了し続け、日本の近代美術史に重要な足跡を残しました。その短い生涯の中で生み出された作品群は、現在もなお研究者や美術愛好家たちに深い感銘を与え、未来へと受け継がれていくことでしょう。彼の作品が持つ独特の美しさ、そしてその背後にある芸術家としての情熱は、私たちに多くのインスピレーションを与えてくれます。

もう一度検索