広島県道287号上蒲刈島循環線

広島県道287号上蒲刈島循環線

広島県呉市に位置する一般県道、広島県道287号上蒲刈島循環線は、安芸灘諸島の一つである上蒲刈島を文字通り一周する、総延長約18.7キロメートルの路線です。起終点は島の中心部、呉市蒲刈町宮盛にある呉市蒲刈支所前に設定されており、ここから島を巡るルートは、島民生活を支えるとともに、上蒲刈島を訪れる人々にとって重要な役割を果たしています。かつては通行不能だった区間がありましたが、現在は自動車での全線走破が可能となっています。

本路線の道路状況は、区間によって大きく異なります。島の南岸全域、具体的には向小市の浜バス停付近から初神を経て営農センターバス停付近に至る区間、および北岸の田戸港から大浦港にかけての区間は、概ね2車線が確保された比較的快適な走行が可能な快走路です。しかし、場所によっては速度制限が設けられているため、注意が必要です。これに対し、その他の区間は道幅が狭く、1.5車線程度の未改良区間が多く存在します。これらの区間では30km/hの速度制限が課されており、慎重な運転が求められます。

島の北岸の一部、特に田戸港から立岩、北刈浜を経て向桟橋に至る区間は、向地区の末端部を除いて人家が少なく、建設業者のプラントが点在するような風景が広がっています。このルートは、かつて蒲刈トンネルが開通する以前は、田戸と向地区を結ぶ実質的に唯一の自動車道でしたが、現在では大雨などの悪天候時に長期にわたって通行止めとなるケースも少なくありません。また、大浦港から営農センターバス停付近にかけての区間や、向小市の浜バス停から向桟橋までの区間は、多くの集落の中を縫うように走っています。これらの区間では生活道路としての側面が強く、住民の往来や瀬戸内産交、さんようバスといった大型路線バスの運行もあるため、特に注意深く運転する必要があります。

島外、特に安芸灘大橋を経由して大浦港方面へアクセスする場合、地理に不慣れなドライバーには初神の交差点から蒲刈広域農道（蒲刈トンネル）へ入り、田戸で改めてこの県道に合流して大浦港を目指すルートが推奨されています。この迂回ルートは特に大型車にとって安全かつスムーズな通行を確保するために推奨される経路です。

自動車での島内一周が可能になったのは、比較的最近のことです。2000年（平成12年）1月18日に安芸灘大橋が開通し本土とのアクセスが改善されたのに続き、その約2ヶ月後の2000年3月24日には、それまで自動車での通行が不可能だった呉市蒲刈町大浦原と呉市蒲刈町田戸初神間の区間が解消されました。これにより、ようやく車での上蒲刈島一周が実現可能となったのです。なお、田戸トンネルの前後には、かつての海岸沿いを走る1〜1.5車線の旧道が現在も残されていますが、現在は倒木や土砂崩れなどにより通行止めとなっています。

主要な道路施設として、この県道にはいくつかのトンネルが存在します。その一つ、原トンネルは延長303メートルで、1999年（平成11年）に竣工しました。このトンネルは、映画『海猿』の中で主人公がバスに乗るシーンのロケ地としても知られています（映画に登場するバス停は撮影のために設置されたセットであり実在しませんでしたが、後に約300メートル西の場所に、さんようバスのバス停が新たに設置されました）。もう一つの主要なトンネルは大浦トンネルで、延長784メートル、2008年（平成20年）の竣工です。

地理的には、本路線は全線が呉市内を通過しています。沿線には、起終点である呉市役所蒲刈支所のほか、美しい砂浜で知られる県民の浜（恋ヶ浜交差点から市道を東へ約1.4km）、本土と上蒲刈島を結ぶ安芸灘諸島連絡架橋の2号橋である蒲刈大橋（1979年開通）、そして呉市立蒲刈小学校などがあります。

上蒲刈島循環線は、変化に富んだ道路状況と、島の自然や歴史、そして地域の人々の暮らしに触れることができる魅力あふれるルートです。安全運転を心がけ、上蒲刈島の多様な魅力を発見する旅を楽しんでください。

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