安芸灘大橋

安芸灘大橋（あきなだおおはし）

広島県呉市において、本州と下蒲刈島を結ぶ重要な架橋構造物です。この橋は、周辺の島々を合計八つの橋で結ぶ「安芸灘諸島連絡架橋事業」の一環として建設された主要な道路橋の一つであり、特に「安芸灘1号橋」とも称されます。また、この連絡架橋群の中で唯一の有料道路橋である点が特徴です。供用開始は2000年1月で、その優れた構造や貢献が高く評価され、1999年には全建賞道路部門および土木学会田中賞作品部門を受賞しています。

橋梁の概要

安芸灘大橋は、主要地方道下蒲刈川尻線の一部を構成しており、その中でも広島県道路公社が管理する区間が有料道路区間に該当します。本州側の呉市川尻町から下蒲刈町下島に至る延長約2.64kmの区間がこの有料道路に含まれます。事業全体の総費用は約487億円に及び、その一部にあたる110億円の償還のため、2030年1月まで有料での供用が続けられる計画です。

橋梁単体としては、全長1,175.0mの吊橋です。2014年時点のデータでは、日本国内の吊橋としては9番目の長さを誇り、広島県内に限れば因島大橋に次ぐ2番目の規模を有しています。特に、都道府県が整備した一般県道に架かる吊橋としては、本橋が日本最長の記録を持っています。

通行料金と利用状況

料金所は本州側の呉市川尻町に設置されています。現在、ETCレーンは整備されておらず、現金または回数券での支払いとなります。歩行者および自転車での通行は無料です。

広島県道路公社が管理する他の有料道路と比較すると、普通車の通行料金は高めに設定されています。例えば、2014年当時の比較では、広島熊野道路が200円であるのに対し、安芸灘大橋は720円でした。この料金設定は、安芸灘諸島の島民にとって安芸灘大橋が生活に不可欠な道路として機能していることから、しばしば高いとの指摘があり、広島県議会や呉市議会でも議論の対象となっています。

こうした背景を受け、2012年1月から2014年3月にかけて、回数券を大幅に割引する社会実験が実施されました。この実験では、100回綴りの回数券を利用した場合の1回あたりの料金が現金通行時の約6割に引き下げられ、交通量の変動が詳細に調査されました。この社会実験の結果を踏まえ、2014年4月からは実験時の料金に消費税が加算された金額が正規料金として適用されています。さらに、地域経済の活性化を目的として、2012年4月からは安芸灘諸島内の指定施設で一定額以上の買い物をした利用者を対象に、帰路の通行料金を助成する事業も行われています。

構造と特徴

安芸灘大橋は、3径間連続2ヒンジ補剛箱桁吊橋という形式を採用しています。橋長は1,175.0m、中央径間長は750.0m、主塔高は119.45mです。道路としては2車線で、両側に歩道が整備されており、全体幅員は約10.0m（橋梁部では12.7m）です。設計速度は40km/時と定められています。

この橋が架かる「女猫瀬戸」または「猫瀬戸」と呼ばれる海域は、天然タイなどの豊かな漁場であると同時に、大型船舶の往来も頻繁です。そのため、環境への配慮から海域内に橋脚や基礎構造物を極力設置しない設計が求められました。また、大型船の安全な航行を確保するため、航路限界は桁下40.0m、可航幅560.0mと大きく設定されました。

これらの条件を満たすためには、長大な橋とする必要があり、吊橋形式が選ばれました。さらに、本州側の主塔は女猫島に、下蒲刈側の主塔は海岸線ぎりぎりに配置された結果、中央径間（750.0m）に対して側径間（本州側255.0m、下蒲刈側170.0m）が非対称となる独特な支間割となりました。中央径間が長いにもかかわらず車線数が2車線と、他の長大吊橋に比べて細身である点、そしてアンバランスな支間割は、構造上の特徴となっています。この構造特性から、強風に対する耐風安定性を詳細に確認するため、1/20および1/120スケールの模型を用いた風洞実験が実施されています。

もう一度検索