安芸灘諸島連絡架橋

安芸灘諸島連絡架橋は、広島県呉市の本州側から瀬戸内海に点在する安芸灘諸島を結ぶ、一連の橋梁群の総称です。一般には親しみを込めて「安芸灘とびしま海道」の愛称で呼ばれています。この架橋ルートは、計8つの橋から構成されており、その総延長は約5.3キロメートルに及びます。

ルートの概要

このルートは、本州から下蒲刈島、上蒲刈島、豊島、大崎下島といった有人島、さらに農耕地のある平羅島、中ノ島といった無人島を経て、最終的に愛媛県に属する岡村島へと至る海の道です。現在、8本の橋のうち7本が供用されています。最初に本州側から下蒲刈島へ渡る1号橋の安芸灘大橋のみが有料区間であり、これに続く蒲刈大橋（2号橋）、豊島大橋（3号橋）、豊浜大橋（4号橋）、平羅橋（5号橋）、中の瀬戸大橋（6号橋）、そして岡村大橋（7号橋）の計7本が現在通行可能で、安芸灘大橋を除いてすべて無料で利用できます。

地理と県境

この架橋ルートは、主に広島県呉市に属する島々を結んでいますが、終点である岡村島は愛媛県今治市に位置しており、7号橋の岡村大橋は広島県と愛媛県の県境を跨いでいます。このため、岡村島まで渡ると県境を越えることになります。かつて平成の大合併以前は、通過する町村も細かく分かれており、関前村（現今治市関前）のみが愛媛県でした。

現状と将来構想

現在供用されているのは7本の橋までで、計画段階である8号橋（名称未定）はまだ事業化されていません。ルートの終点である岡村島から先の島々（小大下島、大下島、大三島など）や四国の今治市本土への移動は、現状では主に船便が担っています。しかし、将来的には岡村島からこれらの島々を橋で繋ぎ、西瀬戸自動車道（しまなみ海道）に接続する「関前諸島架橋構想」も存在しており、これが実現すれば四国本土への陸路でのアクセスが可能になる可能性があります。

橋梁の多様性

この架橋ルートを構成する橋梁は、それぞれが異なる構造形式を持っています。長大で美しい吊り橋、ケーブルが放射状に広がる斜張橋、力強い鋼材が組まれたトラス橋など、バラエティ豊かなデザインや構造を見ることができます。橋を渡るごとに異なる景観や構造美を楽しめるのも、この道の見どころの一つです。

愛称について

「安芸灘とびしま海道」という愛称は、2008年8月に全国からの公募によって決定されました。3000件を超える応募の中から選ばれたこの名前には、「瀬戸内海に浮かぶ島々が、まるで日本庭園の飛び石（とびいし）のように見える様子」や、「安芸灘に通じる美しい海の道」というイメージが込められています。また、有名な「しまなみ海道」になぞらえて「裏しまなみ海道」と呼ばれることもあり、大崎下島から岡村島に至る一部区間は「安芸灘オレンジライン」とも称されます。

沿線の魅力

瀬戸内海の中西部に位置し、多島美を背景に走るこの道は、隣接するしまなみ海道に比べると橋の規模や一般的な知名度は控えめかもしれません。しかし、沿線には独自の魅力が豊富にあります。下蒲刈島には江戸時代の朝鮮通信使ゆかりの建物を復元した施設があり、歴史を感じさせます。上蒲刈島には美しいビーチや温泉、宿泊施設などを備えたリゾート施設「県民の浜蒲刈」があり、海水浴やマリンスポーツ、天体観測などを楽しめます。特に大崎下島の御手洗（みたらい）地区は、江戸時代に潮待ち・風待ちの港として栄えた頃の面影を色濃く残す歴史的な町並みが国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されており、散策が楽しめます。これらの見どころが点在しており、島ごとの個性を感じながら巡るサイクリングやドライブに最適なルートです。

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