広瀬川惣吉

広瀬川 惣吉

宮城県柴田郡柴田町の生まれ、本名はじめ及川惣吉、後に片岡惣吉と改めた。1919年（大正8年）2月18日にこの世に生を受け、1979年（昭和54年）8月6日にその生涯を閉じた。現役時代は身長180cm、体重105kgという体格で、最高位は東前頭3枚目（1952年1月場所、1953年3月場所）であった。所属は伊勢ヶ濱部屋、後に荒磯部屋と名称が変わっている。なお、四股名については、「広瀬川」の「広」が旧字体の「廣」と表記される文献も存在する。

17歳となった1936年、郷里を離れて上京し、角界への門を叩いた。翌1937年1月場所、元関脇清瀬川が師匠を務める伊勢ヶ濱部屋より初土俵を踏み、力士としての第一歩を踏み出した。序二段の番付についてからは一度も負け越しを経験することなく順調に番付を上げ、1941年1月場所では新十両への昇進を果たした。さらに、1943年1月場所ではついに幕内の地位に到達した。

しかし、初めての幕内場所では4勝11敗と大きく星を崩し、無念にも十両への降格を余儀なくされた。その後、再び幕内に返り咲く機会を得たものの、上位への進出はなかなか叶わず、主に幕内の中堅力士として土俵を務めることになった。それでも、戦時中の1944年5月場所では十両で9勝1敗の成績を収めて優勝を飾り、同年11月場所で幕内復帰を果たした。この復帰場所から1955年5月場所まで、実に31場所にわたり幕内の地位を維持し続けたのである。これは、戦後の混乱期から復興期にかけての相撲界において、広瀬川が安定した実力を持ち、幕内力士としての責務を長く果たした証と言えるだろう。

この幕内在位期間中、所属部屋にも変化があった。1953年頃、師匠であった清瀬川親方が退き、兄弟子にあたる元横綱照國が荒磯親方として部屋を継承したことに伴い、部屋の名称が「荒磯部屋」へと改められたのである。広瀬川は、この新しい環境の下でも変わらず土俵に上がり続けた。

広瀬川の相撲スタイルは、左四つに組んでからの吊りや投げを得意としていた。この力強い攻めを生かし、十両と幕内を行き来しながらも、その力士人生は息長く続いた。特に注目されるのは、1959年5月場所をもって引退するまで、満40歳を迎えてもなお土俵に立ち続けた点である。現役晩年には、彼が角界入りした後に生まれた、後の横綱大鵬といった若手力士たちとも番付上で顔を合わせるなど、まさに時代の変化を土俵上で体現した。

特筆すべきは、満40歳で関取（幕内または十両）の地位を維持した記録である。彼は1959年3月場所と5月場所において、この記録を樹立した。これは昭和戦後においては、1954年9月場所の名寄岩以来の極めて珍しい例であった。この広瀬川による40歳関取の記録は、その後長い間破られることがなく、次にこの偉業を達成した関脇旭天鵬が現れるまで、実に55年もの歳月（2014年9月場所）を要したことからも、その稀少性がうかがえる。

通算成績は403勝447敗24休、幕内では263勝324敗19休を記録した。現役在位場所数は66場所、うち幕内在位は43場所に及ぶ。十両では1944年5月場所に一度の優勝経験がある。

引退後、広瀬川は相撲協会に残るという道を選ばなかった。彼は第二の人生として、千葉県にて養鶏業を営んだという。土俵上での息の長い活躍から一転、故郷を離れた地で静かに人生を歩んだのである。

改名歴としては、初土俵から1950年9月場所まで「広瀬川 惣吉」、1951年1月場所から1953年5月場所まで「広瀬川 宗之助」と一度改名したが、1953年9月場所からは再び「広瀬川 惣吉」に戻し、引退までこの四股名で土俵を務めた。

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