広福寺 (土岐市)

廣福寺（こうふくじ）

廣福寺は、岐阜県土岐市土岐津町に位置する臨済宗妙心寺派の寺院です。寿門山という山号を持ち、中部四十九薬師霊場の三十二番札所として知られています。この寺院は、その長い歴史の中で、幾多の変遷を経て現在の姿に至っています。

歴史

廣福寺の起源は、寛永2年（1625年）に遡ります。三河国挙母村（現在の愛知県豊田市）の雲外霄公が、崇禅寺中興の清巌宗源を開山として迎え、土岐口の大沢に慈門山 廣徳寺を建立しました。この時、領主の妻木頼利の許可を得て、寺領として7石2斗が与えられました。その後、寛永4年（1627年）には、廣徳寺三世の光益長公が寿陽山 保福院を開山しました。

承応2年（1653年）には、妻木頼利が江戸で病没し、その法号は「廣徳院殿即心安休大居士」とされました。しかし、万治2年（1659年）に妻木氏が無嗣となったため、寺領は大幅に減少し、失われてしまいます。寛文9年（1669年）には、廣徳寺が土岐口の大沢から辛沢へと移転しました。元禄8年(1695年)には、廣徳寺は土岐郡三十三所巡礼の十五番札所となりました。

明治時代に入り、明治24年（1891年）には、廣徳寺と保福院が合併し、現在の寿門山 廣福寺へと改号しました。しかし、明治34年（1901年）には、旧廣徳寺の本堂と庫裏が火災で焼失するという大きな被害を受けました。この火災の際、明楽川を挟んだ高山地区に住んでいた吉田鎗吉という人物が、炎上する寺院の中に飛び込み、本尊を厨子ごと救い出したという逸話が残っています。人々は彼を「観音の鎗さ」と呼び、その勇気を称えました。

その後、水害に悩まされていた当地の状況を鑑み、また信徒の参詣や布教の便宜を図るため、薬師堂のある現在地への移転が決定されました。大正7年（1918年）には主管官庁の許可を得て、大正9年（1920年）には現在の本堂が建立されました。

廣福寺の本尊は十一面観音で、その左右にはそれぞれ吒枳尼天と薬師如来が祀られています。

境内

境内は台地に位置しており、段丘には鐘楼門が建てられています。この鐘楼門は一間一戸の四脚門で、楼上には梵鐘が吊るされています。鐘楼門の横には延命地蔵尊が祀られており、その他にも位牌堂、成田堂、土蔵などの建物があります。

また、昭和56年（1981年）には鉄筋コンクリート二階建ての庫裏が新築されました。この庫裏には、多目的ホールとして利用できる大広間が設けられています。

文化財

廣福寺は、長い歴史の中で多くの文化財を所蔵してきました。本尊の十一面観音像をはじめ、仏像や古文書などが大切に保存されています。これらの文化財は、寺院の歴史と信仰を物語る上で重要な役割を果たしています。

参考文献

『中部四十九薬師霊場巡礼』　p154～p157　中部四十九薬師霊場会　冨永航平　朱鷺書房　1999年
『土岐市史 2 (江戸時代～幕末)』　第十五編 江戸時代の宗教　第四章　徳川幕府の神道政策　10 神社・寺院調　p374～p386　土岐市史編纂委員会　1971年
* 『土岐津町史』

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