寄人

寄人について

寄人（よりうど/よりゅうど）は、平安時代から中世にかけて、さまざまな人々を指す用語として使われました。この言葉は、特に公家政権や武家政権、さらには民間におけるさまざまな役割を持つ人々に関連付けられます。寄人の意味は多岐にわたり、その由来や歴史的背景を理解することは、日本の社会構造を知る上で非常に重要です。

公家政権における寄人

寄人の一つの形態は、公家政権における職員の呼称です。具体的には、朝廷に存在した和歌所や御書所、記録所といった官衙に所属する職員を指します。この場合、寄人は庶務や執務に熟練した官人が選ばれることが多く、和歌所であれば和歌に関する知識や能力が求められました。定員はおおよそ10から20名で、多くは他の官職からの兼務として務められていました。

寄人という言葉の由来には諸説あり、例えば『類聚名物考』では「寄り合う人」とする説が挙げられていますが、その真偽は分かっていません。歴史学者の稲葉伸道は、このような新しい公的機関には、既存の機関から職員が寄せられてきたのではないかとの推測を示しています。

武家政権における寄人

武家政権の時代においても、寄人は重要な職業の一部として存在しました。この場合、幕府の公文所や政所、問注所、侍所などの組織に属する職員を指し、彼らは公人（くにん）とも呼ばれました。書類の記録や作成業務に従事するため、経験豊富な右筆が任命され、執事や所司代といった幹部も寄人から選出されることが多かったのです。

民間における寄人

寄人という言葉は、荘園と呼ばれる土地所有制度においても重要な役割を果たしました。平安時代には、特定の荘園領主の使用人として雇われた人々が寄人と称されました。当初は、荘園に逃れた浪人が農民としての地位を得ることで寄人となったと考えられています。特に10世紀中頃から、臨時雑役の免除を受けた荘民が寄人と称されるようになりました。

その後、結果的に公民と寄人の区別があまり存在しない状態にまで至り、荘民という用語が一般的に使用されるようになりました。さらに、寄人の一部は荘園内で臨時雑役免除の特権を持つ他の荘園を耕作し、二重の隷属関係を持つことを試みました。

このような実態は、荘園経営の混乱を招き、公領の減少を引き起こす原因ともなりました。これを受けて、荘園整理令などが出されて寄人の活動が制限されることとなります。

商工業者における寄人

寄人という言葉は、商業や職人の社会でも使われました。特定の権門の庇護下に入った商工業者や職能人を指すこともありました。神人や供御人、散所雑色と呼ばれる特定の人々がこの例に当てはまります。このような寄人は、その居住地に関連する権門に属することが多く、時には複数の権門に寄人として所属することもありました。

中世においては、寄人集団が座の形成に関与したことが指摘されています。これにより、寄人は単なる従属階級以上のものであり、社会的な影響力を持つ存在と考えられていたことが明らかになっています。

このように、寄人という概念は時代や社会構造によって異なり、さまざまな役割を果たしてきました。その歴史的な意義を理解することは、日本の社会の成り立ちを知る重要な手掛かりとなります。

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