座主

座主：仏教と法制史における異なる意味

「座主」という用語は、仏教と法制史の両方の文脈で用いられ、それぞれ異なる意味を持っています。本稿では、それぞれの文脈における「座主」の意味、歴史的背景、社会的な影響について詳しく解説します。

仏教用語としての座主

仏教用語における「座主」は、一般的に日本の天台宗における最高位僧侶、天台座主（法主）を指します。これは、寺院において衆僧を統率する力量を持つ僧侶、住持に対する敬称として用いられていました。

しかし、延暦寺においては、トップの僧侶を指す呼称として定着し、天台宗全体を統括する立場となったため、朝廷の承認が必要となりました。平安時代には、この天台座主の地位を巡って、延暦寺と園城寺の間で激しい抗争が繰り広げられたことは有名です。鎌倉時代以降は、皇族が就任する例が多くなりました。明治時代の廃仏毀釈以降は、朝廷の承認が不要となり、天台宗管長の敬称として使用されるようになりました。

延暦寺以外にも、金剛峯寺、醍醐寺、法性寺、元慶寺、彦山霊仙寺など、複数の寺院で「座主」の称号が用いられています。それぞれの寺院における座主の権限や役割は、寺院の歴史や規模、宗派によって異なっていたと考えられます。

法制史用語としての座主

法制史用語における「座主」は、中国の科挙における試験官を指します。科挙試験に合格した者は、選抜してくれた試験官への感謝の意を込めて訪問し、師弟関係を結ぶことが慣例でした。その際、試験官を「座主」と呼んだのです。「座主」は、その場における主、つまり試験官を意味する言葉でした。

一見すると、科挙及第者と試験官の間の個人的な関係に過ぎないように見えますが、この師弟関係が、科挙官僚の中に派閥を生み出し、党争の温床となるという問題がありました。そのため、北宋代には、この弊害を除去するために殿試という制度が導入されました。殿試においては、最終的な試験官が皇帝となるため、官僚間の派閥とは無関係に、皇帝と個々の科挙官僚との間に師弟関係が成立するという論理に基づいています。

まとめ

「座主」という用語は、仏教と法制史という異なる文脈において、それぞれ異なる意味と役割を持っています。仏教では、天台宗における最高位僧侶を指し、その地位を巡る権力闘争や歴史的変遷が複雑に絡み合っています。一方、法制史では、科挙試験官を指し、官僚社会における派閥形成や政治闘争に深く関与していました。これらの異なる文脈における「座主」の意味を理解することは、それぞれの時代背景や社会構造を理解する上で不可欠です。 それぞれの「座主」の役割を理解することで、歴史や社会構造をより深く理解できるでしょう。 今後の研究においても、より詳細な資料の収集と分析が重要になります。

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