庶孽党

庶孽党の概要と背景

庶孽党（しょげつとう、ソオルダン）は、李氏朝鮮時代における庶子たちの抵抗団体であり、その活動は16世紀末から17世紀初頭にかけて展開されました。庶子とは、両班層に属する父親を持ちながら、妾の子として生まれた者たちであり、当時の社会では厳しい差別と蔑視の対象となっていました。

李氏朝鮮においては、太宗の時代から施行されていた庶孽禁錮法によって、庶子たちは文科挙に受験することも許されず、社会的な身分や権利を著しく制限されていました。この法律のもと、庶子たちは自らの父を「アボジ」（お父さん）と呼ぶことも許されず、代わりに「ナーリ」（旦那様）と呼ぶことを強いられるほど、屈辱的な地位に甘んじていました。彼らの生活は厳しいもので、精神的にも肉体的にも多大な苦痛が伴っていたのです。

固い身分制度と庶孽党の結成

庶孽党の結成は、こうした厳しい差別に対する反発から生まれました。『逸史記聞』という記録によると、朴応犀たちは官途を開いてほしいと嘆願するために上訴を行いました。この朴応犀が中心となって結成した集団が庶孽党であり、彼らは儒教や朱子学に対する反発から「無倫堂」と呼ぶ拠点を設けることになります。この拠点は倫理から解放された場所として位置づけられ、彼らの蜂起の日を待ち望んでいました。

庶孽党はまた、『天替行道』というスローガンを模して「真龍未起 偽虎先鳴」の旗を掲げ、同志を募りました。この旗の下には、文士も参加し、彼らの主義に共感を示した者たちが集まったのです。文士の中には、後に朝鮮初のハングル小説『洪吉童傳』を著すこととなる許筠もいました。

政治的な動向と活動

庶孽党は1611年ごろ、活動の幅を広げていきました。記録によると、海州で塩商を行いつつ、富商である李承崇への襲撃を行い、資金を奪うと共に暴力行為を重ねていきます。この戦略は次第に大胆になり、朝廷の文武官を取り込み、国王を退位させる計画にまで発展しました。しかし、彼らの行動は社会の混乱を引き起こし、最終的には逮捕を招く結果となりました。

特に1613年、庶孽党の事件が起こります。彼らが捕まったことを受け、大北派の権力者たちはこの事件を利用し、朴応犀から謀叛計画の告白を引き出しました。彼らの目的は、軍資金を貯えて不満を抱く武官たちを集結させ、明の使臣を襲うというものでした。この混乱の中で、永昌大君が幼少ながらも王位に推される計画が絡んでいたのです。最終的には多くの庶子が逮捕され、冤罪や断罪が問題視される事態となりました。

その後の影響と庶子の状況

庶孽党の活動は、李氏朝鮮の権力闘争に利用され、その結果、彼らの運命は悲劇的なものとなりました。この事件によって、朝廷内の西人派や南人派の勢力は排除され、大北派が政権を独占することに繋がりました。その後、庶子に対する差別は一時的に改善される道が模索されたものの、王朝の混乱や政権交代が続いたため、実質的な改善がなされることはありませんでした。

庶孽党を支持した許筠自身も、1618年には重罪で命を落とし、彼が目指した改革や平等は未だ達成されることなく、李氏朝鮮は崩壊の道を進んでいくのです。彼らの抵抗と活動は、当時の複雑な社会的・政治的文脈の中で重要な位置を占めていたことがうかがえます。

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