建制派 (香港)

香港の建制派とは

香港の建制派（Pro-establishment camp）は、親中派とも呼ばれる政治勢力です。彼らは、中華人民共和国政府と香港特別行政区政府が制定・執行する香港基本法、香港国家安全維持法、そして中国共産党の指導による「一国二制度」などの政策を支持しています。

建制派の構成

建制派は、多様な団体や個人から構成される複雑な構造を持っています。主な構成要素は以下の通りです。

民族資本家: 香港の経済界で力を持つ企業家たち。
旧イギリス領香港政府の役人・公務員: 返還前の政府で働いていた人々。
地元の実業家: 地域経済に根ざしたビジネスを展開する人々。
専門家階層: 特定の分野で高度な知識や技能を持つ人々。
香港親共団体: 中国共産党と親密な関係を持つ団体。
伝統的な左派の労働組合: 労働者の権利を擁護する団体。
地元の社会団体や同郷会: 地域社会や出身地を基盤とする団体。

これらの団体や個人は、「一国二制度」の支持、《基本法》の順守を主張し、反対する団体を批判することが特徴です。

民主派との対立

イデオロギーや政治的立場では、建制派と民主派は対立しています。しかし、特定の経済問題では両者が同じ意見を持つこともあります。一方で、建制派内部でも、政治的スタンスは概ね同じですが、経済的な問題では意見が分かれることもあります。

香港返還後の建制派

1997年の香港主権移行後、建制派は行政府の上層部を占め、地方選挙区直接選挙と職能団体選挙区での議席を組み合わせて立法会の支配権を維持してきました。彼らは、事実上返還後の香港政府の与党連合として機能しています。ただし、香港の行政長官はどの政党にも所属できないため、政党の構成員が行政長官選挙に立候補しても、当選後は政党からの脱退が事実上義務付けられます。

建制派の支持基盤

建制派は、香港社会の主流である工業・商業部門、金融部門、不動産部門などの経済界、専門職階層など、幅広い層の支持を受けています。また、香港政府職員による組合、公営住宅関連、本土出身の「新移民」なども支持層に含まれます。民主建港協進連盟（民建連）と香港工会連合会（工連会）は、建制派の主要政党です。

「保皇党」という言葉

1980年代、香港社会ではイギリスの支配に忠誠を誓う人々を指す言葉として「保皇党」という言葉が使われ始めました。現在では、反共メディアが建制派を指す言葉として使用しています。

近年の選挙状況

香港返還後の立法委員会選挙では、建制派の得票率は約40％にとどまり、民主派の60％を下回っていました。しかし、立法会選挙での優位性は高まっており、2016年の立法会選挙では、政権交代初期に比べて得票率が70％以上増加し、過去最高の87万票を獲得しました。香港立法会では、地域別の直接選挙と機能別の選挙区を組み合わせることで、建制派が多数派を占めています。一方、2019年の香港区議会選挙では、建制派が少数派に転落しました。

主な政党と支持団体

建制派には、多くの政党や政治団体、一部の無所属が含まれます。現在、香港立法会に所属する主な政党は以下の通りです。

伝統的建制派: 民建連、工連会、港九労工社団聯会など。
商界: 經民聯、新民党、自由党、實政圓桌など。
地区組織: 西九新動力、公民力量、創建力量など。
過激派建制派: 新界關注大聯盟、愛護香港力量など。
郷事委員会とその他: 紫荊黨、新世紀論壇、郷議局と各郷事委員会など。

他の政治勢力との関係

建制派は、民主派、香港本土派、修憲派などの非建制派や、反共メディアなどの親欧米派と対立しています。これらの勢力は、建制派を「保皇党」、「獻世派」、「土共」、「左仔」、「港共」などと揶揄することがあります。

まとめ

建制派は、香港の政治において重要な役割を担う勢力です。彼らの動向は、香港の政治状況を理解する上で不可欠であり、今後の香港の行方を左右するでしょう。

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