建国以来の党の若干の歴史問題についての決議

「建国以来の党の若干の歴史問題についての決議」（中国語: 中国共产党中央委员会关于建国以来党的若干历史问题的决议）は、1981年 6月27日から29日にかけて開催された中国共産党第11期中央委員会第6回全体会議（第11期6中全会）において採択された重要な文書です。この決議は、「歴史決議」と略称され、中華人民共和国の建国（1949年 10月1日）から当時の期間に至るまでの一連の重大な歴史的出来事、特に文化大革命を含む時期について、党として公式かつ包括的な総括と評価を行ったものです。

この決議は、1945年の第6期中央委員会第7回全体会議で採択された「若干の歴史問題に関する決議」や、2021年に党創立100年を記念して採択された「党の100年間の奮闘の重大な成果と歴史的経験に関する決議」と並び、中国共産党の歴史認識を示す上で極めて重要な位置を占める文献とされています。

背景

文化大革命の終結後、中国社会は大きな変動期にありました。この時期、共産党の指導部内では、過去に起きた出来事、特に文化大革命や毛沢東個人に対する評価を巡って意見の対立が生じ、党内に思想的な混乱が見られました。こうした状況を打開し、党全体の歴史認識を統一する必要に迫られたことが、この決議が作成された大きな背景です。特に、毛沢東の功罪や文化大革命の性質に関する評価は、当時の中国における最も敏感で議論の多い問題の一つでした。

毛沢東の死後、実権を掌握した鄧小平を中心とする党中央政治局や中央書記処の指導の下、胡喬木が中心となって起草作業が進められました。1980年3月から、政治局拡大会議や第11期6中全会の予備会議などを通じて幾度も修正が加えられ、最終案が固まりました。

内容

決議は、中華人民共和国建国以来の歴史を以下の四つの時期に区分し、それぞれについて評価を行いました。

1. 社会主義改造がほぼ完了した期間（1949年 - 1956年）：この時期の国家指導方針と政策は、全体として適切であったと評価されました。
2. 社会主義建設が本格的に始まった期間（1956年 - 1965年）：大きな成果を上げた一方で、深刻な挫折も経験した時期と位置づけられました。
3. 文化大革命の期間（1966年 - 1976年）：この10年間は、党、国家、そして人民にとって、建国以来最も厳しい困難と多大な損失をもたらした時期であると断じられました。
4. 歴史的な大きな転換期（1977年 - 1981年）：国家が新たな歴史的発展の段階に入った時期であるとされました。

また、決議では個別の歴史的問題にも言及しました。第11期5中全会（1980年 2月）では、文化大革命で失脚していた劉少奇元国家主席の名誉回復が実現しました。これは毛沢東の評価に影響を与えるため、以前は保留されていた問題でした。この名誉回復に続いて、林彪や江青ら「四人組」に対する裁判も開始されました。

文化大革命については、「指導者（毛沢東）が誤って発動し、反動集団（林彪や江青ら四人組）に利用され、党、国家、各民族に大きな災難をもたらした内乱であった」と記述され、毛沢東の誤りを公式に認めました。しかし同時に、毛沢東を「偉大なマルクス主義者であり、偉大なプロレタリア階級革命家」として評価し、「功績第一、誤り第二」という鄧小平の意向に沿った結論が示されました。これは、毛沢東の歴史的な功績を完全に否定することなく、文化大革命の責任を認めつつ、その後の党の正統性を維持しようとする意図が反映されています。ただし、劉少奇に対する迫害については、林彪・四人組一派による権力奪取を目的とした陰謀の結果として位置づけられ、毛沢東自身の直接的な責任については深く追及されませんでした。

政治的帰結

この決議が採択された第11期6中全会は、中国共産党の権力構造に大きな変化をもたらしました。第11期5中全会で「すべて派」の代表格であった汪東興らが既に失脚していましたが、この会議では華国鋒が党中央委員会主席と党中央軍事委員会主席の職を辞任しました。彼は政治局常務委員には留まりましたが、副主席に降格され、事実上指導部の中心から退きました。後任の党主席には胡耀邦が就任し、党中央軍事委員会主席には鄧小平が就任しました。

これにより、文化大革命期の遺産や改革開放路線に反対する勢力は共産党指導部から排除され、鄧小平を核とする新たな指導体制が確立されました。歴史決議は、こうした政治的な再編を思想的に裏付け、鄧小平による改革開放路線の推進に向けた党内の結束を図る上で、極めて重要な役割を果たしたと言えます。

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