廻り舞台

廻り舞台：日本の演劇を彩る回転舞台

廻り舞台は、劇場の舞台機構の一つとして、演劇表現に革新をもたらした重要な装置です。円形の舞台が回転することで、舞台セットの迅速な転換や、複数の場面を同時進行で表現するなど、演劇演出の可能性を大きく広げました。本稿では、廻り舞台の歴史、仕組み、種類、そして西洋演劇への影響について解説します。

廻り舞台の歴史：歌舞伎から世界へ

廻り舞台の起源は、日本の歌舞伎に遡ります。18世紀中頃、大坂の狂言作者、並木正三によって考案されたと言われています。当初は、舞台上の二重舞台を回転させる上廻し式でしたが、その後、舞台床面に円形の切り込みを入れ、円形の床面（鍋蓋）を回転させる切込み式へと発展しました。

江戸時代には、様々な工夫が凝らされ、蛇の目廻し（二重廻し）などの技術も開発されました。これらの技術革新は、歌舞伎の演出をよりダイナミックで複雑なものへと進化させました。

19世紀後半、ジャポニスムの流行とともに、廻り舞台は西洋に紹介されました。1896年、ドイツのミュンヘン王立劇場で初めて採用され、その後、世界中の劇場で広く用いられるようになりました。マックス・ラインハルトなど、著名な演出家も廻り舞台を積極的に取り入れ、西洋演劇にも大きな影響を与えました。

廻り舞台の仕組み：回転の巧みな技術

廻り舞台は、円形に切り抜かれた舞台が、中心部にある心棒によって回転する仕組みです。初期は、奈落で人力によって回転させていましたが、近代化と共に電動式が主流となりました。

回転させる方法は様々で、心棒に横木を取り付けて人力で回す方法や、綱を用いて回転させる方法、そして近代的な電動式など、時代と共に技術が進化しました。現在では、巨大な舞台を精密に制御する技術が確立され、大規模な舞台装置の回転もスムーズに行われています。

廻り舞台の種類：多様な回転機構

廻り舞台は、回転機構によって様々な種類に分類されます。主な種類として、上廻し式、切込み式、独楽回し式、皿回し式、柱立回し式などがあります。

上廻し式: 舞台床面より一段高い舞台を回転させる方式。
切込み式: 舞台床面に円形の切り込みを入れ、円形の床面を回転させる方式。
独楽回し式: 鍋蓋の中心から心棒を下に伸ばし、床下地面に支点を設ける方式。
皿回し式: 鍋蓋の下の地面から支えを上に延ばし、鍋蓋裏面中央に支点を設ける方式。
* 柱立回し式: 鍋蓋の中央に迫を設け、複数の柱で支え、回転軸は柱の台枠の下中央に設ける方式。

これらの種類は、舞台の構造や規模、演出の目的に合わせて選択されます。

著名な廻り舞台：日本の劇場を支える技術

日本には、歴史的にも重要な廻り舞台が数多く存在します。帝国劇場や歌舞伎座といった大劇場の廻り舞台は、その規模と技術の高さで知られています。また、伝統的な手動式の廻り舞台も、各地に残されており、日本の演劇文化を支える貴重な遺産となっています。

廻り舞台：演劇の可能性を広げる革新

廻り舞台は、単なる舞台装置にとどまらず、演劇表現の可能性を大きく広げる革新的な技術でした。その歴史と技術は、日本の演劇文化に深く根付いており、現代の演劇においても重要な役割を担っています。今後も、廻り舞台の技術は進化を続け、より高度で複雑な演劇表現を支えていくでしょう。

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