引っ掛け

「引っ掛け」は、大相撲における決まり手の一つです。この技は、力士が突き押しなどの攻防の中で、相手の腕を両手で抱え込み、体を開きながら相手を前方に倒す、または土俵の外に出すことで成立します。

小手投げやとったりといった他の技とは異なり、引っ掛けでは相手の腕を極めることはありません。むしろ、手繰りの要領で相手のバランスを崩し、引き落とすようにして倒すのが特徴です。この技は、相手の重心を崩し、自分の体重を乗せて一気に勝負を決める際に有効とされています。

引っ掛けが注目を集めた取り組みとして、2003年11月場所7日目の横綱武蔵丸と当時平幕の土佐ノ海の対戦が挙げられます。この一番で、土佐ノ海が武蔵丸に引っ掛けを仕掛け、勝利を収めました。しかし、この敗戦が武蔵丸の引退の引き金となり、結果的にこの相撲が武蔵丸にとって最後の取り組みとなりました。奇しくも土佐ノ海は2000年7月場所2日目にも武蔵丸に引っ掛けで勝利しており、横綱武蔵丸はこの技に苦しめられたと言えるかもしれません。

近年でも、引っ掛けは時折見られる決まり手です。例えば、2017年11月場所9日目の十両の取り組みでは、誉富士が大奄美に対してこの技を決めました。また、2019年9月場所12日目の幕内では、豊山が千代翔馬に、2020年9月場所5日目には御嶽海が照強に、そして2022年3月場所5日目には阿炎が隆の勝に、それぞれ引っ掛けを仕掛けて勝利しています。

このように、引っ掛けは必ずしも頻繁に見られる技ではありませんが、その意外性と、決まった時の鮮やかさから、観客を魅了する決まり手の一つと言えるでしょう。

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