とったり

とったり

「とったり」は、日本相撲協会が定める決まり手八十二手の一つ、捻り手に分類される技です。相手の腕を両手で抱え込み、体を開きながら相手をねじり倒します。同様の技である「腕捻り」とは、体をひねる方向が逆になりますが、かつては「腕捻（かいなひねり）」という別名も存在しました。

概要

とったりは、まず相手の左手首を左手で掴み、同時に相手の左肘を右手で左側へ押します。この状態で体を左に開き、相手をねじり倒すのが基本的な形です。

抱え込んだ腕の肘関節、場合によっては肩関節を極めた状態を作り、やや下方向へ力を加えるのが最も効果的ですが、この場合は非常に危険な技となります。柔道の国際ルールでは2018年から禁止技となり、多くの格闘技でも禁止、または大きく制限されています。足の裏以外が地面につくと負けとなる相撲のルールを考慮すると、見た目以上に危険な決まり手と言えるでしょう。実際、千代大海は晩年の白鵬戦でとったりを受け、右肘を故障したことが原因で、その後力士として衰え、引退を早めたという事例もあります。

とったりは、立ち合いで変化気味に立った際に、相手のバランスを崩したり、有利な体勢に持ち込むためにも用いられます。ただし、このような場合は、完全に極まっていない状況が多いようです。

とったりへの対応策としては、抱えられた腕を相手に突き出すようにして、逆に「逆とったり」を仕掛ける方法があります。また、完全に極まっていない状態であれば、比較的容易に腕を抜いたり、逆とったりの要領で脱出することも可能です。しかし、完全に極まっている場合は、怪我をするリスクが非常に高くなります。

旭國は、大関昇進以前からとったりを得意とし、その代名詞的な決まり手となっていました。また、1991年5月場所3日目には、大横綱・千代の富士が当時小結だった貴闘力にこの技で敗れ、その後引退を表明しました。この一番が、千代の富士にとって現役最後の相撲となりました。

2008年5月場所12日目、前頭3枚目の雅山が同筆頭の把瑠都に決めた際には、解説者が「勝ちをとったり」と洒落ていました。

2017年7月場所では、前頭の宇良が日馬富士をこの技で破り、初の金星を獲得しました。宇良はインタビューで、嬉しさのあまり号泣し、「明日も頑張ります」とコメントしました。

漫画『ああ播磨灘』では、結果的に一本背負いをとったりのように関節技として活用した様子が描かれています。

古い文献では、「とったり」が別の技を指しているケースも見られます。1884年の書籍『今古実録 相撲大全』や1918年の書籍『最近相撲図解』では、とったりは「腕捻」と呼ばれていますが、これは日本相撲協会制定の決まり手である「腕捻り」とは異なる技です。また、1916年の書籍『実地活用相撲必勝術』では、網打ちのことを「トッタリ」と呼んでいます。

このように、「とったり」という言葉は、時代や文献によって意味が異なる場合があることに注意が必要です。

脚注

日本相撲協会公式ホームページ - とったり

関連項目

大相撲の決まり手一覧
アームドラッグ

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