弘安寺

弘安寺（中田観音）

弘安寺は、福島県大沼郡会津美里町に位置する曹洞宗の寺院です。山号は普門山。観音堂があることから、一般には「中田観音」として親しまれています。

歴史

中田観音は、会津ころり三観音の一つとして知られています。本尊である十一面観世音菩薩は、文永11年（1274年）に長者である江川常俊が、亡くなった娘の菩提を弔うために鋳造されました。弘安2年（1279年）に寺が建立され、その年号から弘安寺と名付けられました。

重要文化財に指定されている旧観音堂厨子は、寛永19年（1642年）から慶安元年（1646年）にかけて観音堂が修復された際に、堂外へ出されました。現在は保存庫に納められており、弁財天が祀られています。

文化財

観音堂内には、十一面観世音菩薩と、その脇侍である地蔵菩薩、不動明王の三体が祀られています。これらは全て国の重要文化財に指定されており、特に金銅仏としての写実的な完成度は、当時の最高傑作と評されています。通常、十一面観世音菩薩の脇侍は毘沙門天と不動明王ですが、中田観音では地蔵菩薩が配されている点が特徴です。

重要文化財（国指定）
旧観音堂厨子 - 「建造物」として指定
銅造十一面観音及び脇侍（不動明王・地蔵菩薩）立像 3躯

江川長者伝説

鎌倉時代、会津の江川常俊という長者が、子宝に恵まれないことを悩んでいました。法用寺の観音様に願をかけたところ、娘が誕生しました。常子（姫）と名付けられた娘は、成長したある日、法用寺の祭礼で根岸中田村の地頭である富塚伊賀守盛勝に一目惚れをします。しかし、その思いを誰にも打ち明けられず、姫は病に倒れ亡くなってしまいます。娘の死を悼んだ両親は、姫に似せた観音像を鋳造し、観音堂を建てました。これが中田観音の始まりとされています。

野口英世との縁

地元では「中田の観音さま」として親しまれており、細菌学者の野口英世の母であるシカが深く信仰していたことでも有名です。シカは毎月参篭して月参りをしており、英世が大正4年(1915年)に帰国した際、母と恩師を連れてお礼参りをした写真が境内に残されています。

その他の情報

会津藩主代々の祈願所でもありました。
奥の院(金ごし壇)：中田観音の3尊を鋳造した場所として伝わります。（徒歩で西へ10分、ただし看板はない）
千歳桜（県指定天然記念物）：ベニヒガンザクラであり樹齢750年以上。根岸中田村の地頭富塚盛勝が常姫（幼名・千歳）の死を悼み植えたものとされます。（徒歩で南へ20分）
新鶴温泉健康センター・ほっとぴあ新鶴・ふれあいの森スポーツ公園（徒歩で西へ15～20分）
春日八郎記念館「おもいで館」（車で北へ5分）
法用寺三重塔（車で南へ5分）

交通アクセス

只見線根岸駅（徒歩5分）
磐越自動車道：新鶴スマートインターチェンジから5分、会津若松インターチェンジから約20分
駐車場：裏手に大型用、普通車用計20台分有り

参考文献

会津の歴史伝説（歴史春秋社）P95-99
会津ふるさと夜話２（歴史春秋社）P134-136
奥州会津新鶴村誌（新鶴村誌編纂委員会）P52-62,296
フレッシュ会津さくら紀行(会津生物同好会) p128

関連項目

日本の寺院一覧

外部リンク

会津寺社仏閣 会津六詣出

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