弟子丸泰仙

弟子丸 泰仙（でしまる たいせん）

弟子丸 泰仙は、1914年に佐賀県で生まれた日本の曹洞宗の僧侶です。彼の母親は信心深い仏教徒でしたが、父親は彼にサラリーマンとしての道を歩むことを望んでいました。この両者の期待に揺れる中、彼は駒澤大学に進学し、そこで禅の実践を重視する師、澤木興道に出会います。この出会いが彼の人生の方向性を大きく変えるきっかけとなりました。

弟子丸は、実業家としても成功を収め、特に海外経済協力事業団の設立や世界仏教平和運動に関与しましたが、これらのプロジェクトは反対派の影響により挫折を余儀なくされました。そんな中、澤木興道の死を受けて、彼は出家を果たし、遺志に従いフランスでの禅の普及に挑戦することを決意します。1967年にはシベリア鉄道を経由して渡欧し、フランスの著名な思想家や芸術家たちとの交流を深めました。

彼は、時の永平寺貫首である山田霊林の指示により、ヨーロッパ開教総監に任命され、パリ市内に佛国禅寺（現在のパリ13区）と、ブロワ近郊に禅道尼苑を設立しました。そして、1970年にはAssociation Zen Internationale（国際禅協会）を創設し、海外における禅の教育と普及に力を注ぎました。その活動は、フランス人の弟子を中心に広がり、約80人の弟子とともに長野県佐久市の貞祥寺での禅修行を体験することにもなりました。彼の墓所はこの寺院にあります。

弟子丸 泰仙の活動は、禅の教えを広めるだけでなく、多くの道場の設立にも貢献しました。特に1980年に泰西仏教第一道場を設立したことは、欧州における禅の普及の象徴として重要です。また、彼の著作も多く、和文と欧米文の両方で多数の著書を残しました。例えば、『禅僧ひとりヨーロッパを行く』や『無一物からの挑戦』などがあり、これらは禅の教えをより多くの人に伝えるための重要な媒体となりました。

彼の弟子には、著名な振付家のモーリス・ベジャールが含まれています。また、弟子丸泰仙には子供たちが二人おり、テレビプロデューサーの弟子丸千一郎と映画評論家の西村雄一郎がその名を継いでいます。そして、彼の孫は建築家の魚谷繁礼です。弟子丸泰仙は1982年4月30日に世を去りましたが、彼の教えは今なお多くの人々に受け継がれています。

著作リスト

• - 和文

- 『禅僧ひとりヨーロッパを行く』（春秋社、1971年）
- 『無一物からの挑戦』（文京書房、1973年）
- 『禅と文明』（誠信書房、1973年）
- 『日本人に「喝」』（徳間書店、1981年）
- 『禅の言葉―マルク・ドゥ・スメト』（書と墨絵・弟子丸泰仙 中沢新一・訳 紀伊国屋書店、1996年）

• - 欧米文

- La pratique de la concentration（Zen-Retz、1978年）
- La pratique du zen（Albin Michel、1981年）
- Questions a un Maitre Zen（Zen-Retz、1981年）

弟子丸 泰仙の影響力は、深い精神的教えを求める多くの人々にとって、今もなお重要な存在です。彼の努力と情熱は、禅の普及に留まらず、文化や思想の交流を可能にしたのです。

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