弥勒菩薩半跏思惟像

弥勒菩薩半跏思惟像とは

弥勒菩薩半跏思惟像（みろくぼさつはんかしゆいぞう、みろくぼさつはんかしいぞう）は、仏像の一形式であり、弥勒菩薩が半跏の姿勢で思索にふける姿を表現したものです。具体的には、台座に腰掛け、左足を下げ、右足の先を左太ももに乗せて足を組み（半跏）、右膝の上に右肘をつき、右手の指先を軽く右頬に触れて思索する（思惟）姿をしています。

この像は、6世紀から7世紀にかけて弥勒信仰が大陸から日本に伝わるにつれて広まり、飛鳥時代から奈良時代にかけて多くの作品が制作されました。特に有名なものとして、京都市右京区にある広隆寺に安置されている像が挙げられます。

広隆寺の弥勒菩薩半跏思惟像

広隆寺には、「宝冠弥勒」と呼ばれる弥勒菩薩半跏思惟像（国宝）が安置されています。この像は、右手中指を頬に当てて物思いにふける姿が特徴で、その美しい姿から傑作として知られています。

像の高さは123.3センチメートル（左足を含む）、座高は84.2センチメートルで、アカマツ材の一木造です。表面はほとんど素地を現していますが、元々は金箔で覆われていたことが、下腹部などにわずかに残る痕跡から分かります。右手の人差し指と小指、両足先などは後世に補修された部分です。

制作時期は7世紀と推定されていますが、制作地については諸説あります。作風などから朝鮮半島からの渡来像であるという説が有力ですが、日本で制作されたとする説、あるいは朝鮮半島から渡来した霊木を日本で彫刻したとする説もあります。朝鮮半島からの渡来仏であるとする説からは、『日本書紀』に記されている推古天皇31年（623年）に新羅から請来された仏像がこの像に当たるとも考えられています。

広隆寺の記録『広隆寺資財交替実録帳』には、金堂に2体の「金色弥勒菩薩像」が安置されていることが記されています。1体は「所謂太子本願御形」、もう1体は「在薬師仏殿之内」と注記されており、「太子本願御形」が宝冠弥勒、「在薬師仏殿之内」がもう1体の宝髻弥勒であると考えられています。

宝冠弥勒は「国宝第1号」として紹介されることが多いですが、これは国宝指定時の指定書および台帳の番号が「彫刻第1号」であるためです。実際には、宝冠弥勒と同じ1951年6月9日に国宝に指定された物件は他にも多数存在します。

半跏思惟像のその他の作例

半跏思惟像は、日本各地に数多くの作例が残されています。以下に主な例を挙げます。

東京国立博物館
銅造菩薩半跏像（法隆寺献納） 10躯（飛鳥時代、重要文化財）
菩薩半跏像（朝鮮・三国時代）
菩薩五尊像（中国・北斉時代）
永青文庫
石造菩薩半跏像（中国・北魏時代、重要文化財）
長野県
観松院 銅造菩薩半跏像（飛鳥時代、重要文化財）
盛泉寺 銅造菩薩半跏像（奈良時代、県宝）
福井県
正林庵 銅造如意輪観音半跏像（飛鳥時代、重要文化財）
正法寺 銅造如意輪観音半跏像（鎌倉時代（模古像）、県指定有形文化財）
大阪府
四天王寺 金銅観世音菩薩半跏像（飛鳥時代、重要文化財）
野中寺 金銅弥勒菩薩半跏像（飛鳥時代、重要文化財）
観心寺 金銅如意輪観音半跏像（飛鳥時代、重要文化財）
奈良県
東大寺 銅造如意輪観音半跏像（奈良時代、重要文化財）
中宮寺 木造菩薩半跏像（伝如意輪観音）（飛鳥時代、国宝）
神野寺 銅造菩薩半跏像（飛鳥時代、重要文化財）
岡寺 銅造如意輪観音半跏像（奈良時代、重要文化財）
和歌山県
極楽寺 銅造菩薩半跏像（飛鳥時代、重要文化財）

これらの像は、材質、制作年代、表現技法などが異なり、それぞれに独特の魅力があります。半跏思惟像は、仏教美術の中でも特に人気が高く、多くの人々に愛されています。

関連情報

弥勒菩薩: 弥勒菩薩は、釈迦如来の次に現れる未来の仏として信仰されています。
広隆寺、中宮寺、野中寺: 弥勒菩薩半跏思惟像を所蔵する代表的な寺院です。
神の雫: 漫画作品『神の雫』において、広隆寺の宝冠弥勒や中宮寺木造菩薩半跏像をイメージさせるワインが登場します。

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