野中寺

野中寺（やちゅうじ）

野中寺は、大阪府羽曳野市野々上に位置する高野山真言宗の寺院です。山号は青龍山、本尊は薬師如来。聖徳太子が建立したとされる三太子（叡福寺、大聖勝軍寺、野中寺）の一つで、「中の太子」として知られています。

歴史

伝承によれば、聖徳太子建立48寺院の一つとされ、太子の命を受けた蘇我馬子が開基とされています。しかし、発掘調査の結果からは、創建は白雉元年（650年）頃と推定されています。境内には、飛鳥時代から奈良時代前半にかけて大規模な伽藍が存在したことを示す礎石が残っており、渡来系氏族である船氏の氏寺として建立されたという説もあります。

創建時の堂塔は、南北朝時代の野中寺合戦などの兵火によって全て焼失しました。しかし、境内には中門跡、金堂跡、塔跡、講堂跡、回廊跡など、法隆寺式伽藍配置を示す礎石が残っており、「野中寺旧伽藍跡」として国の史跡に指定されています。

中世までの沿革はあまり明らかではありませんが、一時期は廃寺に近い状況だったと見られています。寛文元年（1661年）に政賢覚英和上と慈忍恵猛律師らによって再興され、享保年間（1716年 - 1735年）には火災で地蔵堂以外を失いましたが、享保9年（1724年）に大和国郡山藩主の柳沢吉里によって食堂と客殿が寄進されました。他の堂宇は享保年間以後に再建されたものです。

江戸時代には律宗の勧学院として栄え、和泉神鳳寺、槇尾西明寺とともに律院三大僧坊として知られました。明治時代中期に現在の高野山真言宗に転じています。

寺の西側には、かつて鎮守社であった野々上八幡神社が隣接しています。

境内

本堂：かつての講堂跡に建てられています。
大師堂
弁財天
中門
東門
鐘楼
地蔵堂：寛文元年（1661年）建立。
経蔵
方丈
灌頂堂
食堂（大阪府指定有形文化財）：江戸時代中期の建立。享保9年（1724年）に柳沢吉里によって別邸の客殿が寄進、移築されたもの。
庫裏
客殿（大阪府指定有形文化財）：江戸時代中期の建立。享保9年（1724年）に柳沢吉里によって別邸の客殿が寄進、移築されたもの。
僧坊（大阪府指定有形文化財）：2棟あり、享保17年（1732年）建立。
お染・久松の墓：歌舞伎・浄瑠璃の演目「お染久松」の墓。
ヒチンジョ池西古墳石棺（大阪府指定有形文化財）
金堂跡：土壇が復元され、礎石が残っています。
三重塔跡：基壇が復元され、礎石が残っています。
山門（仁王門）

金銅弥勒菩薩半跏像

1918年（大正7年）に寺内の蔵から発見された像で、毎月18日に開帳されます。像高18.5cm。飛鳥時代から奈良時代の金銅仏によく見られるプロポーションで、頭部に大ぶりの三面頭飾を付け、裳や台座には文様が刻まれています。左脚を踏み下げ、右手を頬に当てて思惟のポーズを示す半跏思惟像ですが、右手の掌を正面に向ける点が珍しいです。表情からは飛鳥時代の仏像に見られた「古拙の微笑」が消えています。

台座の框部分には銘文が陰刻されており、丙寅年（666年）に「中宮天皇」が病気になった際、「栢寺」の信徒らが平癒を祈願して奉った弥勒菩薩像であることが分かります。銘文中に「弥勒」と明記されているため、制作年代の明らかな弥勒像の基準作として重要視されています。「中宮天皇」については諸説ありますが、定説はありません。「栢寺」についても、どの寺院に該当するかは定説がありません。

文化財

重要文化財
木造地蔵菩薩立像（地蔵堂安置）：平安時代の作。
金銅弥勒菩薩半跏像：飛鳥時代の作。台座銘文に丙寅年の記述があります。
国指定史跡
野中寺旧伽藍跡
大阪府指定有形文化財
野中寺 4棟（僧房2棟、客殿、食堂）
ヒチンジョ池西古墳石棺

札所

西国薬師四十九霊場：14番
聖徳太子霊跡：5番
河内飛鳥古寺霊場：6番
河内六観音霊場：4番

交通

近鉄南大阪線 藤井寺駅から徒歩15分
* 近鉄南大阪線 藤井寺駅から近鉄バスで5分、「野々上」下車、徒歩すぐ

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