弦楽五重奏曲第1番 (メンデルスゾーン)

メンデルスゾーンの代表的な室内楽作品の一つである弦楽五重奏曲第1番 イ長調 作品18は、彼が17歳であった1826年に作曲された作品です。同じジャンルの弦楽五重奏曲第2番 作品87と並び称されるこの曲は、標準的な弦楽四重奏にヴィオラが1パート加わることで、より豊かで厚みのある響きを持っています。

作曲の経緯

本作品は1826年の3月から4月にかけて最初に形作られました。この最初のバージョンは4つの楽章から構成されており、第2楽章にスケルツォ、第3楽章にメヌエットが配置されていました。しかし、メンデルスゾーン自身がこの楽章配置に何らかの疑問を感じていたためか、この初期稿は当時のメンデルスゾーンの作品としては珍しく、出版されることなく保留されました。

数年後の1832年、メンデルスゾーンは幼少期からの親しい友人であり、才能あるヴァイオリニストであったエドゥアルト・リーツの訃報に接します。メンデルスゾーンは友の早すぎる死を深く悼み、その追悼の念を込めて弦楽五重奏のための新しい楽章、「アンダンテ」を作曲しました。

メンデルスゾーンは、この追悼のために書かれたアンダンテを、以前に作曲したこの弦楽五重奏曲の第2楽章として組み込むことを思い立ちます。これに伴い、当初の第3楽章であったメヌエットは削除され、スケルツォは第3楽章へと移動されました。この新しい楽章構成を持つバージョンが最終稿となり、後に正式に出版されることになります。出版に至るまでには、第1楽章と第4楽章にも若干の改訂や補筆が加えられたことが知られています。

なお、この作品から撤回されたメヌエットの楽譜は今日でも現存しており、研究者や演奏家によって演奏・録音される機会もあります。

楽曲構成

最終稿となった本作品は全4楽章で構成されており、一般的な演奏時間はおよそ28分です。各楽章の詳細は以下の通りです。

第1楽章 アレグロ・コン・モート
イ長調、4分の3拍子。活気のあるリズムと抒情的な旋律が特徴的なソナタ形式の楽章です。若きメンデルスゾーンの瑞々しい感性と古典的な形式への理解が融合しています。

第2楽章 間奏曲：アンダンテ・ソステヌート
ヘ長調、4分の3拍子。この楽章こそが、友人の死を悼んで後に追加された楽章です。深く内省的で美しい旋律が展開され、作品に一層の深みを与えています。形式はソナタ形式とされています。

第3楽章 スケルツォ：アレグロ・ディ・モルト
ニ短調、4分の2拍子。初期稿では第2楽章に置かれていた楽章です。自由なフーガ様式で書かれており、メンデルスゾーンらしい軽快で精緻な対位法的手法が駆使されています。急速な動きと複雑な声部書法が見事です。

第4楽章 アレグロ・ヴィヴァーチェ
イ長調、4分の2拍子。終楽章はソナタ形式による活気に満ちた楽章です。冒頭から躍動感あふれる主題が登場し、巧妙な展開を経て、華やかで力強いコーダへと向かい、全曲を締めくくります。

関連作品

メンデルスゾーンが作曲した他の弦楽五重奏曲としては、後年の作品である弦楽五重奏曲第2番 変ロ長調 作品87があります。

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