弦楽四重奏曲第17番 (モーツァルト)

弦楽四重奏曲第17番 変ロ長調 K. 458

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトが1784年に生み出した弦楽四重奏曲です。この作品は、モーツァルトが敬愛するフランツ・ヨーゼフ・ハイドンへ献呈された『ハイドン・セット』と呼ばれる6曲セットの第4番に位置します。

この曲は、『狩』（Jagdquartett）という愛称で広く親しまれており、モーツァルトの弦楽四重奏曲の中でも、特に演奏される機会の多い作品の一つに数えられます。

概要

モーツァルト自身の作品目録には、この弦楽四重奏曲が1784年11月9日にウィーンで完成したことが記されています。

翌1785年2月12日には、父レオポルトやフランツ・ヨーゼフ・ハイドンらを招いた私的な演奏会で披露されました。この時、同じく『ハイドン・セット』に含まれる第18番（K. 464）や第19番『不協和音』（K. 465）と共に演奏されています。ちなみに、この演奏会の前日である2月11日には、モーツァルトの『ピアノ協奏曲第20番 ニ短調』（K. 466）の初演も行われています。

この歴史的な演奏会に立ち会った父レオポルトは、ザルツブルクにいる娘ナンネルに宛てた手紙の中で、この時の感動について触れています。

愛称の由来

『狩』という愛称は、モーツァルト自身が付与した名前ではありません。その由来は、第1楽章冒頭に現れる主題にあります。この主題が、狩りの際に用いられるホルンの音色を想起させることから、後世になってこの愛称で呼ばれるようになりました。

したがって、この曲は具体的に狩りの情景を描いた標題音楽ではありません。

楽曲構成

この弦楽四重奏曲は、全4楽章構成で、演奏時間は概ね25分程度です。各楽章は以下の通りです。

1. 第1楽章 アレグロ・ヴィヴァーチェ・アッサイ
変ロ長調、8分の6拍子で書かれたソナタ形式の楽章です。冒頭の主題が愛称の由来となりました。

2. 第2楽章 メヌエット：モデラート - トリオ
変ロ長調、4分の3拍子によるメヌエットとトリオです。

3. 第3楽章 アダージョ
変ホ長調、4分の4拍子による緩徐楽章です。ソナタ形式の構造を持ちますが、展開部を欠いています。

4. 第4楽章 アレグロ・アッサイ
変ロ長調、4分の2拍子によるソナタ形式のフィナーレです。

この『狩』は、モーツァルトのウィーン時代における円熟した作曲技法と、親しみやすく明快な楽想が見事に融合した作品として、今日でも多くの人々に愛され続けています。

外部リンク

弦楽四重奏曲第17番 変ロ長調 K. 458『狩』の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト（IMSLP）
弦楽四重奏曲 第17番 変ロ長調 「狩」 K.458 - Mozart con grazia

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