張弘彦

張弘彦（ちょう こうげん）

張弘彦（生没年不詳）は、モンゴル帝国に仕えた漢人将軍であり、保定を拠点とする大軍閥、張柔の息子の一人です。『元史』には正式な列伝はありませんが、『経世大典』の抜粋にその事績が記録されており、『新元史』にはこれを基にした列伝が記されています。

概要

張弘彦は、張柔の四男として生まれました。兄には早世した張福寿、順天宣権万戸・兼勧農官となった張弘基、そして後に順天宣権万戸の地位を継承した張弘正がいます。弟の張弘規とともに若年期に郝経に学んだと伝えられています。また、騎射に優れており、生涯で百匹以上の虎を仕留めたという逸話も残っています。

南宋攻略においては、荊山攻めで功績を挙げ、新軍総管の地位を授けられました。さらに、鄂州攻めにおいても先陣を切る活躍を見せました。

モンケ・カアンの死後、モンゴル帝国は内戦状態に陥りますが、張弘彦は一族と共にクビライを支持する道を選びました。中統元年（1260年）には、クビライの本拠地であるドロン・ノール（後の上都）に移り、順天路新軍総管の地位を得ます。中統3年（1262年）には新軍万戸に任じられました。

至元2年（1265年）、昭勇大将軍・郢州万戸の地位を授けられ、至元16年（1279年）には皇太子チンキムに召し出されて侍衛親軍副都指揮使に任命されました。しかし、40歳の時に職を辞し、その後80歳で亡くなったとされています。7人の子供がいたと伝えられています。

順天張氏

張弘彦は、モンゴル帝国における漢人世侯の一角を担った順天張氏の一員でした。父である張柔の築き上げた基盤を背景に、モンゴル帝国に深く関与し、軍事面で重要な役割を果たしました。

参考文献

藤野彪／牧野修二編『元朝史論集』汲古書院、2012年
野沢佳美「張柔軍団の成立過程とその構成」『立正大学大学院年報』第3巻、1986年。
渡辺健哉「『羅氏雪堂蔵書遺珍』所収「経世大典輯本」について」『集刊東洋学』第103巻、中国文史哲研究会、2010年5月、82-94頁
『新元史』巻139列伝36張弘彦伝

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