張政 (塞曹掾史)

張政（ちょう せい）は、生没年不詳の人物で、帯方郡の官吏として塞曹掾史（さいそうえんし）を務めました。彼の名前は、古代日本の歴史に大きな影響を与えた出来事の中で記録されています。

238年、倭の女王である卑弥呼が、大夫の難升米（なしめ）と都市牛利（としごり）を使者として帯方郡に派遣しました。この時、張政は塞曹掾史として、彼らの対応にあたりました。難升米らが魏の皇帝である明帝に謁見を求めた際、張政は案内役と護衛兵を付け、使節団を魏の都である洛陽まで送り届けました。この出来事は、当時の倭国と魏との外交関係を示す重要な史実として知られています。

その後、247年には、倭国が戦火に見舞われた際に、張政は再び歴史の表舞台に登場します。当時の倭国では、邪馬台国と狗奴国という二つの勢力が争っており、その仲介役として張政は倭国へ派遣されました。彼は難升米に黄幢（こうどう）という黄色い軍旗を渡すとともに、檄文によって両国が和解するように説得しました。この行動は、帯方郡が倭国の内紛に深く関与していたことを示唆しています。黄幢は、魏の権威を象徴するものとして、和解の象徴として用いられたと考えられます。

また、一説によれば、張政が黄幢を渡した時期は、魏の崩壊が近づいていた頃であったとされています。そのため、台与（とよ）の使者が贈った品々を晋王に献上し、自らの保身を図ったのではないかという見方もあります。この考えを支持するように、『日本書紀』の神功皇后紀には、266年頃に女王が晋に朝貢したという記述があります。この女王は台与である可能性が指摘されており、この朝貢の背景には、張政の行動が影響していたのかもしれません。

張政の生涯については、詳細な記録は残されていません。しかし、彼が帯方郡の官吏として、当時の倭国と魏との関係、そしてその後の倭国内の政治情勢に深く関わっていたことは、これらの史実から明らかです。彼の行動は、古代日本の歴史を理解する上で、非常に重要な手がかりを提供してくれます。

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