帯方郡

帯方郡の概要

帯方郡（たいほうぐん）は、204年から313年の間、古代中国に存在した郡であり、主に朝鮮半島の中西部に位置していました。この郡は楽浪郡の南半分を割いた数県と、東に濊、南に韓、さらに南端には倭が属していました。後漢から魏、西晋の時代を通じて、帯方郡は韓や倭といった東夷地域に中国文化や技術を広める窓口として重要な役割を果たしました。

帯方郡の成立と歴史

後漢末の中平6年（189年）、公孫度が遼東太守に任命され、勢力を拡大し自身の独立性を強化しました。彼は朝鮮半島に進出し、楽浪郡を支配下に置きました。その後、公孫康が公孫度の後を継ぎ、楽浪郡の南半にあたる地域を分けて帯方郡を設置しました。この動きは実質的な官僚制の確立を伴い、南方の土着勢力である韓や濊族を討伐したことから、朝鮮半島南半の統治体制を整えることに繋がりました。

公孫康はその後、魏の曹操に恭順し、後漢においても帯方郡は正式に認められました。公孫康の死後、息子の公孫淵が主導権を握りましたが、彼は独立志向が強く、最終的には魏と対立するまでに至りました。公孫淵は自らを燕王と名乗り、帯方郡も楽浪郡も燕に属しましたが、238年には魏の司馬懿の軍によって襲撃され、最終的には滅ぼされました。

これにより、形式的には後漢から魏、燕を経て帯方郡が変遷を遂げました。しかし、実質的には公孫氏の支配下にあり、到着した朝貢は彼らが受け取っていたと考えられています。

帯方郡の滅亡とその後

泰始元年（265年）、魏の司馬炎が晋朝を興し、帯方郡における安定も短期間で終わります。永康元年（300年）に入ると、八王の乱によって混乱を招き、帯方郡に属する県は7県に制限されました。建興元年（313年）には高句麗が楽浪郡を征服し、以降は漢人の歴史が朝鮮半島の記録から消失することになります。多くの漢人は虐殺され、奴隷にされ、帯方郡と楽浪郡の址が高句麗の一部となりました。

帯方郡と倭

帯方郡滅亡後もその名称は地理的概念として残り続け、『広開土王碑文』によれば404年には倭が北侵して高句麗と戦った事例も見受けられます。このように、帯方郡はその歴史的意味合いを持ちながら、地理的地域としての概念も広がっていきました。

帯方郡治の位置

帯方郡治の正確な場所についてはさまざまな説があり、具体的な証拠が不足している中でも議論が続いています。例えば、現在のソウルや広州が候補地に挙げられています。しかし、一貫した考古学的証拠が見つかっていないため、確たることは言えません。また、北方説として鳳山郡や安岳郡が提唱されており、帯方郡の領域はそれ以上に広く、他国からの移住者によって中国人社会が形成されていたとする見解も注目されています。これらの多様な理論は、帯方郡の位置やその歴史の重要性を一層深める要因となっています。

帯方郡は、古代朝鮮半島の歴史において中国との接点を持つ重要な存在でした。その影響は今日の朝鮮半島の文化や歴史にまで及んでおり、現在でも研究が続けられています。

もう一度検索