都市牛利

都市牛利：卑弥呼の使者と魏との外交

3世紀中頃、日本の弥生時代において、都市牛利という人物が歴史の舞台に登場します。魏志倭人伝によれば、彼は卑弥呼の使いとして、魏の朝廷に赴いた重要な官吏でした。ただし、名前の表記には異説があり、「都市」を官名とする見方と、人名の一部とする見方があります。本稿では、これらの異説に触れつつ、魏志倭人伝の記述に基づいて都市牛利の活動について詳細に考察します。

魏への朝貢使節

景初2年（西暦238年）6月、卑弥呼は魏の帯方郡太守、劉夏へ使者を派遣しました。その使節団には、大夫の難升米と次使の都市牛利が含まれていました。彼らの任務は、卑弥呼が魏の皇帝に謁見したいという願いを伝えることでした。劉夏はこれを認め、役人と兵士を付けて、使節団を魏の都洛陽まで護衛しました。

洛陽に到着した都市牛利と難升米は、皇帝への貢物を献上しました。その品々は、生口や班布などの貴重な物品だったと考えられます。この朝貢は、倭国が魏への臣従を示す重要な外交儀礼でした。

皇帝からの厚遇と倭国の利得

皇帝は倭からの朝貢を喜び、卑弥呼を「親魏倭王」に封じ、金印紫綬を授与しました。これは、倭国が魏の属国として認められたことを意味します。さらに、皇帝は使節の労をねぎらい、難升米を率善中郎将、都市牛利を率善校尉に任命し、それぞれ銀印と青綬を与えました。

そして、驚くべきことに、皇帝は莫大な下賜品を倭国に贈りました。その品々は、絳地交龍の錦、コウジスウゾクのケイ、センコウ、紺青、紺地句文の錦、細班華のけおりもの、白絹、金、刀、銅鏡、真珠、鉛丹など多岐に渡り、その量は計り知れませんでした。この下賜品は、朝貢という形式的な臣従の行為に対する魏からの見返りと考えられます。しかし、その規模は、倭国にとって大きな経済的利益をもたらしたことは間違いありません。

歴史的意義と解釈

都市牛利の魏への派遣は、3世紀における倭国の外交史において重要な出来事でした。この出来事を通して、倭国と魏の交流、そして卑弥呼の政治的戦略の一端を知ることができます。魏志倭人伝は、当時の国際関係や倭国の政治状況を理解する上で貴重な史料です。

都市牛利に関する記述は、魏志倭人伝の記述に依存するところが大きく、彼の人物像は謎に包まれています。しかし、卑弥呼の信頼厚い使者として魏の朝廷に赴き、重要な役割を果たしたことは確かです。彼の活動は、倭国の国際的な地位向上に貢献し、魏との関係を強化する上で重要な役割を果たしたと考えられます。

また、魏から受けた莫大な下賜品は、倭国の経済発展にも寄与したと考えられます。この外交成功は、卑弥呼の権威を高め、倭国の安定に貢献したでしょう。

都市牛利の生涯については、魏志倭人伝以外に詳しい記録は残されていません。しかし、彼の行動は、古代日本の歴史を理解する上で重要な手がかりを与えてくれます。今後の研究により、都市牛利に関するさらなる知見が得られることを期待したいです。

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