張群

張群：中華民国を揺るがした政治家・軍人の生涯

張群（1889年-1990年）は、20世紀初頭から半ばにかけて、中華民国の政治と軍事の両面で重要な役割を果たした人物です。四川省の地方役人の家庭に生まれた彼は、華陽中学卒業後、軍人を志し、保定通国陸軍速成学堂を経て、蒋介石らと共に日本に留学、東京振武学校で砲兵を学びました。留学中、秘密組織「鉄血丈夫団」にも加わっています。

辛亥革命勃発の報を受け、帰国した張群は上海で革命派に加わり、陳其美率いる部隊で活動しました。この時、蒋介石、黄郛と「盟兄弟」の契りを結んだと伝えられています。その後、二次革命に参加しますが敗北し、再び日本に亡命。陸軍士官学校を卒業し、その後は南洋で教鞭をとるなどしました。護国戦争勃発を機に帰国し、孫文の護法運動に参加、大元帥府参軍に任じられます。しかし、四川省での活動は挫折を経験します。

その後、北京に移り、北京政府で要職を歴任。1924年の北京政変後は国民軍に属し、河南省警務処長などを務めました。しかし、国民軍の敗北により上海へ逃れた後、蒋介石率いる国民革命軍に参加、総司令部総参議に任じられ、蒋介石の権力基盤強化に貢献します。1927年、蒋介石の下野に伴い一時的に下野しますが、まもなく日本へ同行し、日本政府高官との秘密会談を行いました。

蒋介石の復権後は、国民党の中枢に位置し、中政会委員、外交委員会委員などを歴任しました。済南事件や張作霖爆殺事件では、日本との交渉や張学良への説得など重要な役割を果たしました。これらの功績により、国民革命軍総参謀長、上海特別市長、国民党中央執行委員など要職を歴任。国民党内では新政学系という派閥の指導者としても活躍します。また、中国共産党掃討作戦にも関与しました。

日中戦争の激化に伴い、張群は外交部長に任命され、日本との交渉にあたります。広田弘毅の「広田三原則」を拒絶し、強硬な姿勢を貫きました。日中戦争勃発後は、軍事委員会秘書長、行政院副院長、国防最高委員会秘書長などを歴任しました。さらに、劉湘の後任として四川省政府主席に就任し、日中戦争における後方支援体制の整備に貢献します。特に、成都周辺の飛行場建設は、B-29による日本空襲において重要な役割を果たしました。

終戦後、張群は国共内戦のさなか、行政院長に任命され、戦後復興政策に携わりましたが、内戦の激化により大きな成果は得られませんでした。国共内戦末期には重慶綏靖公署主任に任じられ、西南部確保に尽力しますが、盧漢の共産党への寝返りにより逮捕、拘束されます。その後釈放され、台湾に逃亡しました。

台湾でも、国民党の中枢で重要な役割を担い、日本との交渉にも携わり、経済協力や反共戦略について話し合いました。1990年、101歳で死去しました。張群の生涯は、激動の中国近代史を生き抜いた、稀有な政治家・軍人の物語です。彼の行った数々の外交交渉や、国共内戦における役割、そして国民党における地位は、中国史において重要な位置を占めています。彼の功績と複雑な歴史的背景は、現代においても研究の対象となっています。

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