護国戦争

護国戦争：袁世凱の帝政と各地の反乱

護国戦争は、1915年から1916年にかけて中国で発生した内戦であり、民国革命における第三革命に位置づけられます。この戦争は、袁世凱が中華民国を帝政へと移行させようとしたことが発端となり、各地の軍閥が反旗を翻し、最終的には袁世凱が失脚、病没する結果となりました。

戦争の背景

1913年、国民党の宋教仁が暗殺されたことで第二革命が発生しました。孫文らは武力で袁世凱を倒そうとしましたが失敗し、日本へ亡命。国民党は解散させられました。その後、1915年8月には、楊度らが帝政復活を目論み、籌安会を結成します。

袁世凱は、アメリカの行政学者であるF・J・グッドナウを招聘し、『共和與政制論』を発表させ、立憲君主制が中国に適合すると主張しました。しかし、梁啓超はこれに反対し、「異哉所謂国体問題者」という一文を発表し、立憲君主制に反対の意を表明します。10月には、「国民代表大会」で国体投票が行われ、袁世凱を皇帝に擁立することが決定しました。

12月、袁世凱は国号を中華民国から中華帝国に改め、1915年12月12日に中華帝国皇帝として即位しました。これにより、民国5年（1916年）は中華帝国洪憲元年となり、袁世凱は洪憲皇帝、または洪憲皇朝と呼ばれることになりました。

挙兵の計画

孫文の亡命後、中国革命党では孫文の指導に反対する内紛が発生し、一部が離脱して「欧事研究会」を結成しました。彼らは、黄興を新たな指導者として想定し、東京や上海で袁世凱に反対する運動を展開。また、袁世凱に失望した蔡鍔や梁啓超とも連携し、袁世凱打倒のための協力体制を構築しました。

挙兵の場所として、蔡鍔の活動拠点であった雲南省が選ばれました。1915年夏以降、李烈鈞らによって挙兵の計画が進められ、北京を脱出した蔡鍔は日本や香港を経由して雲南入りしました。天津で監視されていた梁啓超も上海へ脱出し、欧事研究会員の保護下に入りました。さらに、ペナンに亡命していた岑春煊も上海に合流し、日本政府や軍部に協力を要請しました。唐継堯と蔡鍔・李烈鈞は昆明で会談を開き、自分たちの軍隊を「護国軍」と命名しました。

しかし、この計画から孫文は完全に蚊帳の外に置かれていました。孫文の手法や言動に反発して結成された「欧事研究会」が深く関与していたため、孫文が参加する余地はなかったのです。

戦争の過程

雲南都督の唐継堯と蔡鍔は1915年12月25日に雲南省の独立を宣言し、約2万人の護国軍を組織しました。袁世凱は雲南省の反乱を鎮圧するため「征滇臨時軍務処」を設置し、北洋軍を三方向に分けて雲南省へ進攻させましたが、北洋軍は四川省で蔡鍔に大敗しました。

1916年1月27日には貴州省、3月15日には広西省も独立を宣言。北京政権内部からも袁世凱から離反する者が現れました。袁世凱は3月22日に帝政を取り消し、大総統の位に戻りましたが、蔡鍔らはこれを認めませんでした。

4月6日には広東省、4月12日には浙江省が独立し、5月8日には雲南省、貴州省、広西省、広東省が広東省にて北洋政府に対抗する軍務院を設立。その後、陝西省、四川省、湖南省も相次いで独立を宣言しました。

袁世凱は失意のうちに倒れ、6月6日に病没しました。6月9日、孫文が中華民国臨時約法の復活を宣言すると、蔡鍔、梁啓超、黄興らもこれに同意。副総統である黎元洪が中華民国臨時約法に基づいて大総統に就任すべきであると主張しました。

6月29日、黎元洪大総統が中華民国臨時約法と国会の回復を宣言。7月14日、唐継堯は軍務院の撤回と護国戦争の成功を通電し、各省は相次いで独立を取り消しました。

戦争の影響

護国戦争は、中華民国成立後の南北分裂の端緒となりました。袁世凱は皇帝になりたいという野心から孤立し、南方各省の軍人は軍事力で北京政権に反抗しましたが、中央を征服するほどの力はありませんでした。袁世凱の死後、北洋政府は分裂し、軍閥が台頭するようになります。

孫文は広州で護法運動を展開し、北京とは別の広東軍臨時政府を樹立しました。中華民国内の分裂は10年以上続き、北伐、蔣桂戦争、中原大戦などを経て、蔣介石が権力を獲得するまで続きました。

護国戦争は、中国の歴史において、大きな転換点となりました。袁世凱の野心的な行動は、結果として中国の分裂と混乱を招き、その後の中国の歴史に大きな影響を与えることになったのです。

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